ルシファー『集会の山』で語る
あらゆる点で神と同等でありたい、という野望を持つルシファー。全能の主が天国に住むすべての天使を前にして、王を定め宣言された時の、あの聖なる山にならい、北国の宮殿を『集会の山』と呼んでいます。
「やがて、ここにこられるはずの王である独り子を盛大に歓迎するにはどうしたらよいか。そのことを協議するために集会を開くよう、我々は命令されているのだ」
と、ルシファーは嘘のロ実を設けて、指揮下の全軍をここに集めました。
やがて真実を装いつつ、中傷の言葉をまじえ、語り始めました。一同は、ただ黙々と聞き耳を立てます。
ルシファー、すべての天使に屈辱を語る
「座天使よ、主天使よ、権天使よ、力天使よ、そして能天使よ! わたしはお前たちに呼びかける。ただし、天使の階級がただの空しい肩書きでないと信じてだ!
というのは、全能の主の命によって、今や独り子がすべての権力を我がもの顔に独占する。油を注がれし王という名の下にだ。われわれの栄光は、ことごとく奪いとられてしまった。我々がこのように慌ただしく深夜の行進をあえて行い、急ぎここに参集したのもそのためだ。
我々が未だかつて行ったこともない脆座の礼、つまり平身低頭して拝むというあの醜悪な礼を、我々から受けようとここへやって来る独り子を迎えるのには、どんな新しい礼を工夫すべきか相談するのだ!
全能の主に対してさえ過分の礼なのに、いわんや、もう一人の独り子に対し、二重に拝礼するなどとはもってのほかだ!」
ルシファー、脆座の礼を拒否する
「だが、もし、熟慮を重ねた結果、我々の気持が大胆になり、この軛(くびき)を拒否するすべを知ったらどうなるのか? それでも、なお、お前たちは己の首をさしのべ、身をかがめて己の膝を屈するのであろうか?
断じて否、とわたしは思う。ただし、わたしがお前たちを正しく知っており、またお前たち自身も、かつて自分が何者にも隷属せず、自由であればだ。自由の点において同等であった天の住人であったことを、自覚しているとすればの話だ。
序列と階級は、自由と食い違うどころか調和する。とすれば、権利によって当然同等である者、権力と栄光において劣るとはいえ、自由においては同等である者として生きてきた我々である。理性や権利の点からいって、いったい誰が王として君臨しうるのか?
間違うことのない我々に、律法と命令を誰が下しうるのか? ましてや、そのために我々の主となり拝脆を求めるとは、言語道断といわねばならぬ。これこそ、隷属者としてでなく、支配者として定められた身分を示す我々の誇り高き称号を侮蔑するもの、と言わなくて何であろうか?」
ルシファーの言葉に、織天使アブデル立ち上がる
ルシファーの節度をわきまえない大胆不敵な言葉。一同は、黙って聞いていたのですが、話がここまできた時、聴衆の間から、織天使の一人が立ち上がりました。
神を崇め従うことにおいては誰よりも熱心なアブデルが、突如として立ちあがりました。織天使アブデルとは、一体何者でしょうか?