失楽園(天使間アルマゲドン)

全能の神、独り子に出陣を告げる。

「既に二日が経過した、だから、第三日目は汝に委ねる。
わたしはそのことを汝のために前から定め、この大いなる戦いを終結させる光栄を汝に与えようとして、今まで事態の推移を黙認してきた。
なぜなら、汝以外にはいかなる者も、この大役を果たしうるものはいないからだ。
わたしは、汝のうちに無限の力と権能を注ぎ込んでおいた。それは、天国と地獄におけるすべての者に比類なき汝の力を知らしめるため。また、やがて汝によって鎮められるはずのこの度の騒乱こそ、汝が全てのものの世嗣(よつぎ)、王たるにふさわしいことを示す契機であることを、知らしめるためなのだ。
されば、汝、いと強き者よ、汝の父のカを信じて行くがよい。
わたしの戦車に乗り、天の大地を打ち震わせるこの迅速な車輪を駆って、出撃するがよい。わたしの軍勢を引きつれ、強力かつ全能な武器である、わたしの弓、雷霆と剣を汝のその強い腰におびるがよい。
そして、闇の子らを追い払い、天国のあらゆる境界から最果ての深淵の中へ墜してしまうのだ。こうすることによって、神と、頭に油を塗られた王である救世主を蔑むことがいかなることか、地獄で心ゆくまで充分に学ばせるがよい」
神はこう語られてから、その燦然たる光をまっすぐに御子に投じます。煌々と輝く父なる神の光をその顔に受けられた御子の姿には、神そのものの如く表現を絶するものがありました。

神の独り子、決意を持って神の右の座から立ち上がる。

神の独り子が父なる神に言われました。
「ああ、父よ。
天における最高の王座に坐し給う者よ。
初めより存在する、いと高き、いと聖き、いと善き者よ。
あなたは、常に子たるわたしの栄光を顕わそうとしておられます。わたしもまた、当然常にあなたの栄光を顕わそうとつとめております。
父よ、あなたがわたしを愛し、わたしを通じて御意志を達成することは、わたしの祝福に他なりません。これこそわたしの栄光であり、栄誉であり、この上なき喜びだと思っております。
あなたの与え給う王笏と権力とを、わたしは今己のものといたします。が、やがてこの戦いが終り、あなたが全てになられ、わたしが永久にあなたの中におり、あなたの愛されるすべての者がわたしの中にいる日が来る時、喜んでそれらをお返します。
しかし今、わたしは、あなたの憎み給う者を憎みます。そして、すべてにおいてあなたの像であるわたしは、あなたの柔和を身につけるのと同じく、あなたの怒りも身につけることができます。
わたしはこれから直ちにあなたの御力を身にまとい、あの叛逆者らをあなたに服従することこそ、全き幸福であると示します。その正しい服従の道からあえて離反したルシファーたちを天国から除き、彼らのために設けられたあの恐ろしい住処へ、闇黒の鉄鎖と死ぬことなき地獄へ追い落しましょう。
その時には、あなたの清純な天使たちは、聖なる山を囲みます。そして、あなたに向かって心からなるハレルヤを、いと高き讃美の歌を、わたしを中心にして、共に歌うことでありましょう」
神の独り子はこう言うと王笏の上に身を屈めてから、栄光に輝き給う神の右の座から立ち上がりました。
こうして、第三日目の聖なる朝が明けようとし、その曙光が天の隅々に輝き始めたのです。

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