アブデルはルシファーに向かって、その高慢さと無礼さを非難し、全能の神の力に挑むことが愚かであることを指摘します。
彼は、真理を持ち、理性と信仰に勝利することが重要だと主張します。アブデルは友軍と共に敵陣に向かい、ルシファーに対して神の力と全天使の忠誠を語ります。
ルシファーの姿はそそりたつ塔のよう
武勲をたてようと奮起したアブデルは、ルシファーの姿を見てもくじけず、自分自身に向けてつぶやきます。
「ああ、なんということだ！ 信仰心と忠誠心もないというのに、ルシファーはまだ最高位の天使の外観だけは輝いて見える。美徳が損われているのに、なぜ力と勢威だけは損われていないのか？
それとも、その実体は弱くもろいということか？
このルシファーの考えがいかに不健全で邪悪なものであるかは、すでに議論を通して私は知っている。
とすれば、今度は、全能の神のご加護を信じて、その力を試してみよう。真理の問題の論戦において勝ったのだから、武力においても勝つのは当然なことだろう。
理性が暴力と戦うとき、理性が勝利を得ることは、まさに理に適ったことだと思う。たとえ、その争い自体は、野蛮で醜いものであったとしてもだ」
心の中でこのように考えながら、アブデルは凛々しく武装した友軍の中から敵陣めがけて進んでいきます。そして、ルシファーに出会い、語りかけます。
アブデル「倣慢かつ無礼な奴め！」
「ああ、ついにやってきたか、倣慢かつ無礼な奴め！
お前は、神の座を手に入れるのは簡単なことだと、思っていたかもしれない。だが、武器を取って蜂起し、全能の神に戦いを挑むことがどれほど空しいことかを知らないとは、なんという愚か者！
それとも、お前の力や強力な弁舌に恐れをなして、護衛の者が逃げ出し、神の座が無防備になっていると思ったか！」
「全能の神は、どんな小さなものからでも無数の大軍を生み出し、お前の愚かな挑戦を粉砕することもできるのだ！
いや、その片手でも、いかなる限界も超え、他の者の援助を借りることなく、ただ一撃でお前を滅ぼし、お前の大軍を暗黒の世界に葬り去ることもできるのだ！
だが、見るがよい、必ずしも天使全員がお前の一味ではない。私がお前の仲間の中にいて、他のすべての者と意見を異にし、ただ一人過ちを犯していたかに見えた時でさえ、お前には見えなかったのだろうか。
神に対する信仰と忠誠を選んでいた者も多数いたのだ。見るがよい、この大軍が私の仲間だ。たとえ多数が過ちを犯している時でも、真実を知る者が時として少数はいることを、遅まきながら知るがよい」
ルシファー「お前らの軍勢は天の楽人にすぎぬ！」
「この煽動家め！気の毒だが、お前に復讐しようと思っていた折も折、よくぞ戻ってきてくれた。お前が逃げ出してから、私は先ず何よりもお前を探し求めていたのだ。
どうしても怒りが収まらぬ私のこの右手の一撃を、当然の報いとしてまず受けてみるがよい。お前は、我々に楯ついた不遜な奴だ。
そして、我々を、内部に聖なる活力があると感じる限りは、全能者と独り子を容認しえないどころか、むしろ自らが神々であることを主張するために集まった、実に全天使の３分の１に当たる我々を、糾弾したのをよもや忘れてはいまい。
それにしても、お前が自分の陣営から率先して飛び出してきたとは！ 私を打ち破って称賛を得ようという魂胆かもしれぬが、かえってお前の受ける痛手が、他の者の破滅のいい見せしめになろうというものだ。
だがその前に、簡単に一言だけ言っておきたい。というのは、私が返事に窮したとお前に自慢されては心外だからだ。私は、天の住人にとっては、天とはすなわち自由のことだと思ってきた。
ところが、今にして分かったことは、多くの者が怠惰に流され、祝祭と歌のみを喜んで奉仕するだけの天使に堕しているということだ。
お前が頼みとする軍勢はかかる連中、つまり天の楽人にすぎぬ。この楽人たちを自由な我々の天使と戦わせたら、結果は今日中には判明するはずだ」
