アブデルは夜を徹して進み、光り輝く平原に神の軍団を見ました。神はアブデルの忠誠をほめ、新たな使命を与えました。
また、神は大天使ミカエルとガブリエルに、堕落する定めにある者たちに対抗するよう出陣を命じました。
天使アブデル、神の軍団を目にする
天使アブデルは、ルシファーの手下に追跡されることもなく、夜を徹して天の広い平原を進んでいました。
やがて〈曙〉が、そのバラ色の手で〈光〉の門をあけると、朝の到来です。
アブデルの眼に、にわかに炎々と照り映えている隊伍の戦車、焔をあげて燃えている火の馬などで一面におおわれている平原の光景が見えました。全能の神の軍団です。
そして、報告しようと自分が持ってきた情報が、すでに知れわたっているのを悟ったのです。そして、勇躍して味方の軍勢の間に入って行きました。
一同は、神に叛逆し堕落したあの大勢の軍勢の中から、一人だけ、たった一人の天使アブデルだけが戻ってきたことを知り、歓声をあげて喜び、迎え入れました。
すぐさま、彼を神の聖なる山の方へと導き、玉座の前につれていったのです。
アブデルを讃える全能の神
黄金色の雲に包まれた玉座の周りから、全能の神の声が響いてきます。その声は、私に向かって穏やかにこう語りかけます。
「神の忠実なアブデルよ、汝はまことによくやった! 誰よりもよき戦いを戦った!
汝はただ一人で無数の叛逆者に対して、彼らが用いた武力よりも強力な言葉を用いて、真理の大義を守り、真理の証のために、暴力よりもさらに堪えがたい衆人の誹謗に堪え通してきた。
たとえ、他のあらゆる者から頑迷と非難されても、ただただ神の前で称賛されることだけを、汝はひたすら心がけてきた。
ところで、汝には仕事がまだ残っている。敵を征服するという、前よりもさらにやさしい仕事だ。ここにいる大勢の味方の援助をえ、再び敵の軍勢のもとへ、汝がかつて嘲笑を浴びて立ち去ったもとの場所へ、今こそ栄光を一身に浴びて帰ってゆくがよい。
そして、律法としての正しい理性を拒否し、救世主を王としていただくことを拒否している、あのルシファーの軍勢を、力をもって制圧するがよい」
ミカエルとガブリエルに出陣の命が下る!
〈大天使ミカエル〉
「それから、天軍の指揮者であるミカエルよ、汝も征くのだ! 武勇においてミカエルに次ぐガブリエルよ、汝も共に征くのだ!
汝ら二人は、私の天下無敵の軍勢を率いて戦場へ赴いてもらいたい。そうだ、隊伍を整えて出陣を待っている幾千、幾万という私の凛々しき天使の軍勢を引きつれて出かけてもらいたい。
数においては、私の軍勢はあの叛逆の徒と同じであるはずだ。
汝らは、火と凄まじい武器をもって勇敢に彼らを襲い、天の崖まで追いつめ、神と祝福の座から懲罰の座へ、奈落の底へ、と追い落すがよい。
もうすでに、そこでは、炎々と燃えさかる混沌が大きなロを開いて、堕ちてくる彼らを待っているはずだ」