フレデリク・ファン・ファルケンボルフ〈バベルの塔〉
洪水で、ノアの家族以外は皆死んでしまった。
ということは、一つの家族が世界中の祖先なんだから、
世界にいろいろな言語があるのはどうして?
ノアの家族が話していた一つの言語のはずだよね。
なのに、英語を勉強しなくちゃとか
私はフランスに行きたいから、フランス語
わたしはイタリア語だし、
僕は中国語、
いやいや、おれは韓国語......
神様、どうして一つの言語にしなかったの?
ワシ(神様)わかる、わかるよ。
み〜んな、ハムの子孫がいけないの。
特に孫のニムロデがね。
あのバカ者ニムロデが
ワシの地位を狙って高い高〜い塔を立てはじめたから。
「バベル」本来の意味で「神の門」って言ってたの。
ただただ、わしの天界に来たかったのね。
バカだね〜、人間って。
あっ、ごめん、ごめん。
ニムロデのこと。
どうせ、天まで届くはずがないから
わし、ず〜っと安心してたの。
ところが、大天使エリアルがやってきて、
「神様、ゆゆしき問題です。
サタンがニムロデをそそのかしているようです。
塔がある程度の高さになれば、
そこから、一挙にサタンの軍団が
天界に攻め込む計画です」
さすが、エリアルちゃん。
サタンに一度ダマされているから
サタンのことは一番よくわかっている。
「サンキュー、エリアルちゃん。
あとはワシに考えがあるから大丈夫よ」
それから、ワシは、
塔がどんな風にに作られているか
よ〜く見ていたのね。
塔を作るのは、以下の組織編成だったの。
設計をしている班
指揮しているのは、一人の管理官で
その背後にいるのが、ニムロデ。
そして、ニムロデが陰でサタンと通じてた。
現場では、
班に一人ずつ指揮をする人間を置いている。
レンガ用の土を集める班
土からレンガを整形する班
レンガを焼く班
レンガを運搬する班
レンガを組み立てる班
同じように、大理石の切り出しから
整形し、組み立てる班もあった。
このように、多数の班が役割分担して
塔を高く高く組みあげていた。
だから、ワシは
この多くの班に1つ1つ別々の言語を
話すように頭の中を操作したの。
だから、
班どうしではお互い言葉が通じなくなって
塔の作業は、ストップしたというわけ。
言葉が通じなくて「混乱=バベル」したの。
だから、バベルの塔と呼ばれるようになったの。
もともとは「神の門」という意味だったんだけどね。