ギュスターブ・ドレ「ミルトン失楽園」サタン(ルシファー)は、地球のエデンを目指していました。

そのことを察知した大天使ガブリエルとラファエル。

地球のエデンには、アダムとイブが幸せに暮らしていました。

ラファエルが語るルシファー

「神が求め給うものは、我々の自発的な奉仕でこそあれ、強制された奉仕ではない。愛するも愛さないも、その自由は我々の意志にある。墜ちるも堕ちざるも、この点にかかっている。

かつて、ある大天使とその一味が墜ちたが、彼らは不従順の罪に堕ち、天国から地獄の底へ落ちたのだ」

ラファエルの話は続きます。

「まだ、『堕落』のなんたるかを知らなかった頃、あれほど栄光に輝き、完全無欠であった多くの天使たちの破滅を、わたしは悲しみの心なくして語ることはできない」

地球とその周りがまだ〈混沌〉の時代

ある日、全能の主の命によって、すべての天使が集められました。天使は軍勢となって、それぞれの指揮者に率いられ、それぞれの軍旗をはためかせ、円陣を幾重に作り、整列していました。

全能の主は、円陣の中心に立たれました。祝福につつまれた、主の御心に抱かれ座っている独り子を傍らにして。

全能の主の新たな福音

「わたしの言葉を聞くのだ、すべての天使よ。光の子らよ。今日、わたしは我が独り子と宣言するものを生み、この聖なる山において、その頭に油を注ぎ王と定めた。

今、わたしの右手に座っている者だ。わたしは、彼を汝らの首(かしら)と定める。天のすべての者が、その前にひざまずき、彼を己れの主と崇めるように。

彼に背く者は、わたしに背く者である。

背く者は、けっし許されることがない暗黒の奈落に呑み込まれるだろう」

全能の主がこのように語ると、その御言葉にすべての天使が歓喜しました。そうだ、確かにそのように見えたのです。

しかし、事実はすべての天使がそうだったわけではなかったのです。独り子を讃える大宴会が、夜が更けるまで続いていました。

そして夜になると、天使の大軍勢はそれぞれの天幕に入り休みました。

しかし、ただ一人、ルシファーだけは眠れずにいたのです。ルシファーは権力と名誉においても、また全能の主の寵愛においても偉大な天使の階級に属していました。

「なんで、独り子なんだ! 我々がいるではないか」

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