ルシファーの命、密かに軍団の中に
ルシファーは、寝ている腹心の部下を起こしました。
「愛する友よ、眠っているのか?
かつて、私が自分の心をお前に打ち明けたように、お前もお前の心を私に打ち明けた。だから、こうして話すのだ。
全能の主から出た、あの昨日の命令がどのようなものであったか、お前は覚えているはずだ。
新しい律法が課せられたのだ。新しい律法が出された以上、仕える我々にも、また新しい心が生ずるのは当然だといえよう。我らも協議の場を設けて、今後どのような不測の事態が生じるか話し合う必要がある
これ以上のことをここでロにするのは危険だ。
だから、我々が指揮している隊長たち全員を召集してもらいたい。そして、薄暗い夜が明ける前に、全能の主の命に従って、私も全軍も、急ぎ北の我が領地へ行進を開始する、と。
そして、すべての階層の天使の間に新しい律法を伝えようとしている、我々の王にして偉大なメシアをいかに迎えるか、それにふさわしい饗応の準備をしたい、とも言ってもらいたい」
ルシファーの軍団は、全天使の3分の1!
このように、ルシファーは理由については意味ありげなことを述べ、合間あいまに暖味で、相手に異様な感じを与えるような言葉をさし挟み、その誠実な心に探りを入れながら、あわよくばその心を惑わそうとしたのです。
つまり、ルシファーは欺隔にみちたことを語り、腹心の仲間がまだはっきりしない頭に、不埒な考えを吹き込んだのです。
やがて、ルシファーの腹心は自分の指揮下に属し、しかもそれぞれの指揮の任に当たっている天使たちを、時には同時に多勢を、また時には一人ずつ呼び集め、言われた通りに伝えていきました
一同は、今まで通りの命令と自分たちの偉大な指導者の権威ある声に従います。
つまり、それほどルシファーの名は天使間でも偉大であり、天におけるルシファーの地位は高かったのです。
星の群れをおさめる暁の明星のようなルシファーに魅了され、その虚言にたぶらかされて、彼のあとにつき従った者の数は、実に全天使のうちの3分の1にも及んでいました。
ルシファーの反乱に気づいていた全能の主
その頃、密かに隠されたいかなる思いをも見抜き給う全能の主は、その座られている聖なる山の頂きから、夜を徹して絶えることなく燃えつづけている黄金の燈火の間から(といってもその明かりの力をかることもなく)今まさにルシファーの叛乱が生じつつあることを見通されていました。