初日の敗北は明らかですが、ルシファーは屈しません。彼は得意な詭弁とも言える話術で仲間を巻き込みます。しかし、その実はルシファー自身が自分を奮い立たせているのです。
ルシファーに続いて立ち上がったのは、権天使の首領であるニスロクですが……
天使間アルマゲドン初日の夜
天使たちにとって、天使間アルマゲドン初日の夜は待ち望んだ休戦と静寂の時間でした。何しろ、彼らはこれまで戦ったことが一度もありませんでした。勝者も敗者も、それぞれの陣地に引き返していました。
激しい戦いが行われていた場所では、ミカエル率いる優れた天使たちが夜を過ごすための陣地を設けています。その周りには見張りの一団が配置されています。
一方、ルシファーは叛乱の仲間と共に姿を隠し、暗闇の中へと移動していました。彼は一刻の休息も取らず、主だった指揮者たちを呼び集め、今後の対策を練る会議を開きました。
そして、ルシファーはその中央に立ち、初日の悲惨な戦いに臆することなく、こう語り始めました。
ルシファー「我々は負けなかった！」
「親愛なる戦友たちよ。試練を経て、今、武力において我々は敗北しなかった。
それは、こうして自陣に無事帰ったからには明らかだ。君たちは単に自由にふさわしいだけでなく、それ以上に我々が重視するもの、つまり名誉、主権、栄光、そして名声にふさわしい者であることが明確になったと言わなければならない。
君たちは、天を支配する神が我々に向かって進撃させた最精鋭の軍勢と戦い、抵抗し、雌雄を決することができなかった。それは１日に及んだが、その１日が永久に続くかのようだ。
全能の神は、あれだけの軍勢で我々を従わせることができると思っていたかもしれない。しかし、実際にはそうはならなかった。
だとすれば、今まで全能の神と考えられていた彼を、今後は間違いを犯す存在と見なしてもいいのではないか！」
ルシファー「我々の不覚は、武装の点で劣勢であったこと」
「我々が武装の点で劣勢だったため、いくらかの不覚をとった。今まで味わったこともない苦痛を感じたことは、事実だ。だが、この苦痛にしても、実際には全く意味がないこともはっきりした。
霊的な我々の体は、致命的な傷を受ける性質のものではない。不滅であり、肉体に深刻な傷を負ってもすぐに治り、生来の活力によって回復する。治療法がこんなに簡単なら、災いも取るに足らないものだと思える。
おそらく、次の戦いで、さらに強固な武装と強力な兵器が我々にあれば、味方は優位に立ち、敵は劣位になるだろう。少なくとも武装が等しければ、力の差も解消される。
もし敵の優位の隠れた原因が他にあれば、我々が冷静な心でいれば、その原因を見つけ出せると思う」
ルシファーに対して、ニスロクもの申す
自分に言い聞かせるように語ったのは、シファーでした。
彼についで立ち上がったのは、権天使の首領であるニスロクです。その姿は、修羅場から今脱出してきたばかりといった鎧もずたずたの姿。疲労の色もありありと示しています。
そんな暗い表情で、ニスロクはルシファーに何を訴えるのでしょうか？
※ニスロク＝「鷲」の意。アッシリアの偶像神
