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ラザロの復活レンブラント〈ラザロの復活〉

さて、ひとりの病人がいた。ラザロといい、マリヤとその姉妹マルタの村ベタニヤの人であった。このマリヤは主に香油をぬり、自分の髪の毛で、主の足をふいた女であって、病気であったのは、彼女の兄弟ラザロであった。

イエスは彼らに言われた、
「わたしたちの友ラザロが眠っている。わたしは彼を起しに行く」

すると弟子たちは言った、
「主よ、眠っているのでしたら、助かるでしょう」

イエスはラザロが死んだことを言われたのであるが、弟子たちは、眠って休んでいることをさして言われたのだと思った。

するとイエスは、あからさまに彼らに言われた、
「ラザロは死んだのだ。そして、わたしがそこにいあわせなかったことを、あなたがたのために喜ぶ。それは、あなたがたが信じるようになるためである。では、彼のところに行こう」

さて、イエスが行ってごらんになると、ラザロはすでに四日間も墓の中に置かれていた。ベタニヤはエルサレムに近く、二十五丁ばかり離れたところにあった。大ぜいのユダヤ人が、その兄弟のことで、マルタとマリヤとを慰めようとしてきていた。マルタはイエスがこられたと聞いて、出迎えに行ったが、マリヤは家ですわっていた。

マルタはイエスに言った、
「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう。しかし、あなたがどんなことをお願いになっても、神はかなえて下さることを、わたしは今でも存じています」

イエスはマルタに言われた、
「あなたの兄弟はよみがえるであろう」

マルタは言った、
「終りの日のよみがえりの時よみがえることは、存じています」

イエスは彼女に言われた、
「わたしはよみがえりであり、命である。わたしを信じる者は、たとい死んでも生きる。また、生きていて、わたしを信じる者は、いつまでも死なない。あなたはこれを信じるか」

マルタはイエスに言った、
「主よ、信じます。あなたがこの世にきたるべきキリスト、神の御子であると信じております」

ゴッホ「ラザロの復活」ゴッホ〈ラザロの復活-レンブラントを模して〉

マルタはこう言ってから、帰って姉妹のマリヤを呼び、「先生がおいでになって、あなたを呼んでおられます」と小声で言った。

これを聞いたマリヤはすぐ立ち上がって、イエスのもとに行った。イエスはまだ村に、はいってこられず、マルタがお迎えしたその場所におられた。

マリヤと一緒に家にいて彼女を慰めていたユダヤ人たちは、マリヤが急いで立ち上がって出て行くのを見て、彼女は墓に泣きに行くのであろうと思い、そのあとからついて行った。

イエスはまた激しく感動して、墓にはいられた。それは洞穴であって、そこに石がはめてあった。
イエスは言われた、「石を取りのけなさい」

死んだラザロの姉妹マルタが言った、
「主よ、もう臭くなっております。四日もたっていますから」

イエスは彼女に言われた、
「もし信じるなら神の栄光を見るであろうと、あなたに言ったではないか」

人々は石を取りのけた。すると、イエスは目を天にむけて言われた、
「父よ、わたしの願いをお聞き下さったことを感謝します。あなたがいつでもわたしの願いを聞きいれて下さることを、よく知っています。しかし、こう申しますのは、そばに立っている人々に、あなたがわたしをつかわされたことを、信じさせるためであります」

こう言いながら、大声で「ラザロよ、出てきなさい」と呼ばわれた。

すると、死人は手足を布でまかれ、顔も顔おおいで包まれたまま、出てきた。イエスは人々に言われた、「彼をほどいてやって、帰らせなさい」

(ヨハネによる福音書)