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モーセの十戒レンブラント〈モーセ十戒を砕く戒〉

〈出エジプト記〉

モーセは身を転じて山を下った。彼の手には、かの二枚のあかしの板があった。板はその両面に文字があった。すなわち、この面にも、かの面にも文字があった。その板は神の作、その文字は神の文字であって、板に彫ったものである。

ヨシュアは民の呼ばわる声を聞いて、モーセに言った、
「宿営の中に戦いの声がします」

しかし、モーセは言った、
「勝どきの声でなく、敗北の叫び声でもない。わたしの聞くのは歌の声である」

モーセが宿営に近づくと、子牛と踊りとを見たので、彼は怒りに燃え、手からかの板を投げうち、これを山のふもとで砕いた。また彼らが造った子牛を取って火に焼き、こなごなに砕き、これを水の上にまいて、イスラエルの人々に飲ませた。

モーセはアロンに言った、
「この民があなたに何をしたので、あなたは彼らに大いなる罪を犯させたのですか」

アロンは言った、
「わが主よ、激しく怒らないでください。この民の悪いのは、あなたがごぞんじです。彼らはわたしに言いました、『わたしたちに先立って行く神を、わたしたちのために造ってください。わたしたちをエジプトの国から導きのぼった人、あのモーセは、どうなったのかわからないからです』。

そこでわたしは『だれでも、金を持っている者は、それを取りはずしなさい』と彼らに言いました。彼らがそれをわたしに渡したので、わたしがこれを火に投げ入れると、この子牛が出てきたのです」

モーセは民がほしいままにふるまったのを見た。アロンは彼らがほしいままにふるまうに任せ、敵の中に物笑いとなったからである。モーセは宿営の門に立って言った、
「すべて主につく者はわたしのもとにきなさい」

レビの子たちはみな彼のもとに集まった。そこでモーセは彼らに言った、
「イスラエルの神、主はこう言われる、『あなたがたは、おのおの腰につるぎを帯び、宿営の中を門から門へ行き巡って、おのおのその兄弟、その友、その隣人を殺せ』」

レビの子たちはモーセの言葉どおりにしたので、その日、民のうち、おおよそ三千人が倒れた。

そこで、モーセは言った、
「あなたがたは、おのおのその子、その兄弟に逆らって、きょう、主に身をささげた。それで主は、きょう、あなたがたに祝福を与えられるであろう」

あくる日、モーセは民に言った、「あなたがたは大いなる罪を犯した。それで今、わたしは主のもとに上って行く。あなたがたの罪を償うことが、できるかも知れない」

モーセは主のもとに帰って、そして言った、
「ああ、この民は大いなる罪を犯し、自分のために金の神を造りました。今もしあなたが、彼らの罪をゆるされますならば? しかし、もしかなわなければ、どうぞあなたが書きしるされたふみから、わたしの名を消し去ってください」

主はモーセに言われた、
「すべてわたしに罪を犯した者は、これをわたしのふみから消し去るであろう。しかし、今あなたは行って、わたしがあなたに告げたところに民を導きなさい。見よ、わたしの使はあなたに先立って行くであろう。ただし刑罰の日に、わたしは彼らの罪を罰するであろう」

そして主は民を撃たれた。彼らが子牛を造ったからである。それはアロンが造ったのである。