
9月15日はカトリック教会で「悲しみの聖母マリア」を記念します。
キリストの十字架の道を、母マリアは静かに見守り、その心には深い痛みがありました。「ピエタ(Pietà)」として知られる芸術作品は、母が御子を抱くその瞬間を表し、信仰と人間の悲しみの深さを象徴しています。
マリアの姿は、悲しみを超えて希望を選ぶ力を私たちに教えてくれます。
祝日の起源と歴史
悲しみの聖母を記念する祝日は、15世紀のドイツ・ケルンで最初に広まりました。のちにオーストリアやハンガリーでも祝われるようになり、1817年に教皇ピオ7世によって全教会の祝日として定められました。
典礼暦では「十字架称賛の祝日(9月14日)」の翌日に置かれており、キリストの受難とマリアの痛みを連続して思い起こせるように工夫されています。
神学的背景と意味
キリストの受難は、ただひとりで背負われたものではありませんでした。マリアは御子を愛する母として、その救いの業に深く参与したとカトリック教会は教えています。
ルカによる福音書2章35節にある預言、「あなた自身も剣で心を刺し貫かれます」は、マリアの生涯における苦しみを示しています。
信者たちは昔から、マリアの痛みを「七つの悲しみ(Seven Sorrows)」として祈りの中に記念してきました。
- シメオンの預言(幼子イエスを抱いたときの予告)
エルサレムの神殿でマリアは、預言者シメオンから「あなたの心も剣で刺し貫かれるでしょう」と告げられました。イエスに待ち受ける苦しみと、それに伴う母の痛みを暗示した言葉です。 - エジプトへの逃避(ヘロデ王の迫害からの逃亡)
幼いイエスを守るため、マリアとヨセフは夜のうちにベツレヘムを離れ、遠いエジプトへ避難しました。家を捨て、異国へ逃げる不安は、母の強さと愛を示しています。 - 12歳のイエスを神殿で見失った出来事
過越祭でエルサレムを訪れたとき、12歳のイエスが行方不明になりました。3日後に神殿で発見したものの、母としての心配は深く、子を探す焦りを味わった瞬間でした。 - 十字架への道でイエスと出会ったときの苦しみ
イエスが十字架を背負って歩く途中、マリアは群衆の中でその姿を見ました。助けたいのに助けられない痛みは、母としての愛の試練でした。 - 十字架の上でのイエスの死を見守る悲しみ
ゴルゴタの丘で、マリアは十字架上のイエスを見守りました。最も辛い場面で、彼女は最後まで御子のそばに立ち続け、静かな信頼を示しました。 - 十字架から下ろされた御子を抱く(ピエタ)
処刑後、イエスの亡骸が十字架から下ろされ、マリアの腕に戻されました。「ピエタ」と呼ばれる場面で、母が子を抱くその姿は、悲しみと愛の極みを表しています。 - 埋葬の場へと御子を送り出す別れ
イエスを墓に納めるとき、マリアは最終的な別れを経験しました。悲しみの中で、神への信頼と希望を手放さなかった姿が、信仰の力を物語ります。
この七つの場面は、マリアの痛みを通して「愛と信頼を貫く強さ」を私たちに教えています。
信心と祈りのかたち
「悲しみの聖母」への信心は、長い歴史を持っています。特に知られているのは**「七つの悲しみのロザリオ」**と呼ばれる祈りです。
このロザリオでは、上記の七つの場面を一つずつ黙想し、マリアと共にキリストの受難をたどります。
マリアの悲しみは、単なる嘆きではなく、人々の苦しみを神の前に差し出す心です。現代でも、家庭や修道院、学校などでこの祈りが唱えられ、困難に直面する人々の支えとなっています。
芸術と文化の中の「悲しみの聖母」
悲しみの聖母は、数多くの芸術作品の題材となりました。
特に有名なのは、**ミケランジェロの《ピエタ》**です。バチカン大聖堂にあるこの彫刻は、十字架から下ろされたイエスを静かに抱くマリアを描き、母の深い悲しみと穏やかな受容を同時に表しています。
また、中世の詩「スタバト・マーテル(Stabat Mater)」は、マリアが十字架の下に立つ姿を歌い、多くの作曲家(ペルゴレージ、ロッシーニなど)が美しい音楽に仕上げました。絵画や聖歌の中でも、マリアの悲しみは信仰と芸術を結ぶ橋として生き続けています。
今日へのメッセージ
マリアの悲しみは、ただ過去の出来事を思い出させるものではありません。
それは、**「共に苦しむ心」**を私たちに教える記念日でもあります。家族や友人、社会の中で、誰かの痛みに寄り添い、慰めることは、マリアの優しさを現代に生きることにつながります。
悲しみの聖母の祝日は、苦しみの中に希望を見出す道を示してくれるのです。
まとめ:9月15日の聖人は悲しみの聖母マリア(ピエタ)
9月15日の「悲しみの聖母マリア(ピエタ)」は、キリストと共に苦しみを担い、救いの愛に参与した母の姿を思い起こさせます。
七つの悲しみ、ピエタ像、スタバト・マーテルの旋律は、悲しみの奥にある希望を私たちに語りかけます。
私たちもまた、人生の痛みを抱えるとき、マリアのように静かな愛を選び、人の悲しみに寄り添うことができるのではないでしょうか。
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