
10月26日は、カトリック教会で「聖エヴァリスト教皇」を記念する日です。
ベトレヘム出身のギリシャ系ユダヤ人として生まれ、やがてローマに赴き、第5代の教皇として教会の基礎を築いた人物です。
その活動は、初代教会の発展と仲間たちの協力を促すものであり、私たちが今も大切にする“教会の共同体”という考え方につながっています。
今日は、聖エヴァリストがどんな人生を歩んだのか、どんな影響を残したのか、一緒に見ていきましょう。
Contents
聖エヴァリスト教皇|プロフィール
- 名前
:聖エヴァリスト教皇/Pope St. Evaristus - 生没年
おおよそ 99 年〜107 年ごろ(在位) - 出身地・時代背景
ベトレヘム(当時はユダヤ属州)でギリシャ系ユダヤ人として出生。ローマ帝国下、第二代皇帝 トラヤヌス の時代に教皇職を務めました。 - 肩書き・役職
司教・教皇(ローマ教会の第5代目)として、ローマを小教区に分け、助祭(ディアコノイ)を任命し、教会組織の構築に貢献しました。
聖エヴァリスト教皇の生涯
青年期からの転機
聖エヴァリストは、ベトレヘムでギリシャ系ユダヤ人の家庭に生まれたと言われています。
キリスト信仰に入った後、ローマへ赴き、当時の教皇であった 聖クレメンス教皇 の後を継いでローマ司教となりました。ローマのキリスト共同体がまだ成長途上にあった時代に、重要な転機を迎えたことがうかがえます。
信仰と活動の展開
教皇として在位中、ローマの教会を「小教区(ティトゥリ/タイトル)」に分け、各小教区に神父を配置し、さらに7人の助祭(ディアコノイ)を任命して、教会の働き(奉仕・祈り・説教)を分担させたと伝えられています。
こうした組織の整備は、ローマ教会が「司教一人が一人ですべてを担う」のではなく、「共同体としての教会」の形を整えるための大切な一歩でした。
また、エヴァリストの時代は使徒時代(初代の弟子たちが活動した時代)に比較的近い時期であり、教会が新約時代から成長していくなかでの重要な時期でした。
ただし、具体的な文書や詳細な行動記録は少なく、“何をどれだけ行ったか”については不確かな部分もあります。
晩年の評価
エヴァリスト教皇が執務を始めたのはおおよそ99/100年、または97年という説もあり、在位期間は9年程度と言われています。
彼の死後、ローマのヴァチカン(サン・ペトロ大聖堂の地下にある聖ペトロの墓近く)に埋葬されたと伝えられています。
また、一部の伝承では「殉教」の称号が付されているものもありますが、確かな史料でその殉教が認められているわけではありません。
聖エヴァリスト教皇の名言・エピソードから学ぶ
残念ながら、エヴァリスト教皇については信頼できる「名言」が現在残されている資料がほとんどなく、確かな引用を1つ挙げることができません。
そのため、「名言」という形式ではなく、エピソードから学べることを代わりにご紹介します。
例えば、教皇としてローマ教会を小教区に分けて7人の助祭を任命したという活動は、責任を分かち合い、共同体として働くという大切な姿勢を示しています。
私たちが今日、教会活動や地域活動を行うとき、「一人で背負う」のではなく「仲間とともに分担・協力する」その精神が、この時代に始まっていたと言えます。
また、ローマという大都市の中で、教会がただ一つの場所ではなく小さな集まりを通じて広がっていったという組織的な視点は、今日でも教会、地域社会、ボランティア活動などにおいて有効なモデルと言えるでしょう。
カトリック的ポイント解説
神学的に大事にしたテーマ
エヴァリスト教皇の時代背景を考えると、使徒の時代から続く教会の成長期に当たります。
「教会はただの集まりではなく、仕えるものたちが組織され、共同体として存在する」という意識が芽生えていたと考えられます。つまり、「奉仕」「分担」「共同性」が神学的にも重要なテーマでした。
その意味では、エヴァリストは「みんながそれぞれの賜物(たとえば助祭や司祭としての働き)を用いて、教会という体を成す」という理念を実践したとも言えます。
現代の信仰生活にどう生きているか
私たちの教会生活や信仰生活においても、「一人だけで頑張る」のではなく「仲間とともに支え合い、役割を分担していく」ことはとても大切です。
エヴァリストのように、「小さな集まり(小教区)を通じて信仰を広げる」「助け手(助祭・ディアコノイ)を置いて奉仕する」という形は、現代でも教会のミニストリー(奉仕)や地域信仰共同体のモデルとして活きています。
また、宗教的な組織だけでなく、ボランティア団体や地域活動においても、「みんなで分担し、協力して進める」という精神は共通です。エヴァリストの活動を通して、「信仰の実践は共同体である」というメッセージを受け取ることができます。
聖エヴァリスト教皇|ゆかりの地・書籍・芸術
- ゆかりの地
ローマ:教皇として活動した都市。
サン・ペトロ大聖堂近く:エヴァリストの遺体が埋葬されたと伝えられています。 - 芸術作品・肖像画
教皇の肖像は15世紀以降に後世によって描かれたものであり、例えば サンドロ・ボッティチェリ の壁画「システィーナ礼拝堂」に教皇たちの肖像の一つとしてエヴァリストが描かれていることが確認されています。
また、版画や銅版彫刻で「Portrait of Pope Evaristus I (97-107) by Italian School」といった作品もあります。 - 書籍・伝記
信頼できる詳細な伝記・著作は残されていないため、学術的には『リベル・ポンティフィカリス』などの古文書がエヴァリストに関する記録を伝えています。例えば『教会史』(エウセビオス著)も参照されます。
まとめ|今日の聖人から学べること
聖エヴァリスト教皇は、ベトレヘムで生まれ、ローマで教会の組織づくりに貢献した初期教会の重要な指導者です。
彼が行った「ローマを小教区に分け、助祭を任命する」という働きは、教会が共同体として成り立つための礎となりました。そして、彼の生涯から学べるのは、「ひとりではなく、皆で分かち合いながら信仰を育てる」という姿勢です。
現代の私たちも、教会で、地域で、友人・家族との関係で、この精神を生かすことができます。エヴァリストの歩みを思い起こしながら、今日の私たちの暮らしにどんな「分かち合い」があるか、静かに考えてみましょう。

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