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聖フランシスコ・ボルジア

10月10日は、カトリック教会で「聖フランシスコ・ボルジア」を記念する日です。

彼はかつて高い身分と富を捨て、全てを神への奉仕へとささげた司祭であり指導者でした。その生涯には検討すべき変化や挑戦が多く、わたしたちが信仰をどう生きるかを共に考えさせてくれます。

今日はその人生をたどりながら、彼から学べることを探してみましょう。

聖フランシスコ・ボルジア|プロフィール

  • 名前
    聖フランシスコ・ボルジア/Francis Borgia
  • 生没年
    1510年10月28日 ~ 1572年9月30日
  • 出身地・時代背景
    スペイン・ヴァレンシア地方ガンディア(Gandía)出身
    16世紀ルネサンス期、スペインはカトリック王国として力を持ち、海外探検や教会改革の動きも活発だった時代
  • 肩書き・役職
    司祭、イエズス会第3代総長(上級指導者)
    かつてはガンディア公爵(スペインの高貴な貴族)

聖フランシスコ・ボルジアの生涯

以下では、彼の人生を大きな段階に分けて見ていきます。

青年期・貴族としての歩み

フランシスコは、スペインの有力なボルジア家に生まれました。彼の家系には教皇アレクサンデル6世などもおり、著しい権勢を持っていました。

若いころから敬虔な性格で、修道士になりたい願いを抱いていたと伝えられていますが、家族や社会的な責任からそれは実現できていませんでした。

のちに皇帝カルロス5世(スペイン王カルロ1世としても知られる)に仕え、宮廷政治や王室との関係に関わる役割を果たしました。

結婚して子をもち、公爵の地位も継ぎ、政治的・社会的な責務を果たす生活を送っていました。しかし、その中でも心には信仰の叫びがあったのでしょう。

信仰と活動の展開:転機と変化

1546年、彼の妻が亡くなったことが大きな転機になりました。

子どもたちが成長・独立するのを見届けた後、彼は生き方を根本から変えたいという思いを強めます。イエズス会の創立者である聖イグナチオ・デ・ロヨラの影響を受け、最終的にイエズス会に入会を決意します。

1551年には司祭に叙階され、以降は教育・宣教・組織運営に力を注ぎました。彼はスペインの管区長となり、複数の学校を設立して教会改革にも関わりました。

1565年、前任のイエズス会総長ディエゴ・ラエスが亡くなると、フランシスコは第3代総長に選ばれます。総長として、世界中に会員を派遣し、学校や修道院を創設するなど拡大に努めました。

>>イエズス会の創立者イグナチオ・デ・ロヨラとは?

晩年と評価

晩年、彼はローマに滞在し、多くの教会運営に携わりました。1572年9月30日、ローマでその生涯を閉じます。

彼はその後1670年に教皇クレメンス10世によって列聖(聖人)とされました。その働きぶりと謙遜な生き方から、イエズス会の「第二の創立者」と呼ばれることもあります。

彼の生涯は、世俗の地位を捨てて神のために尽くした奇跡的な変化の物語とも言えます。

聖フランシスコ・ボルジアの名言・エピソードから学ぶ

一つよく知られている言葉があります。

侮辱は高貴な魂をより強いものとする
(チェラノのトマス『聖フランシスコの生涯(第一伝記)』より)

この言葉は、苦しみや誤解、非難を受けても心を乱さず、むしろ神への信頼を深めて立ち上がるという精神を表しています。

フランシスコ自身も、教会改革などの中で反対や批判に直面したことでしょう。それでも彼は、高慢になることなく、謙遜と質素な生活を保ち続けたと伝えられています。

また別のエピソードとして、彼はあるとき、親しい弟子レオーネとの道中でこう語りました。

たとい小さき兄弟たちがありとあらゆる人をキリスト信仰に帰依させたとした場合ですら、そこには完全な歓びはないのだよ
― それでも完全な歓びは神との一致の中にある、という意味を伝える言葉です。

この言葉は、たとえ人を改宗させるような大きな働きをしても、それ自体が最終目的ではなく、神との深い一致や信仰の質こそが大切だという教えを含んでいます。

カトリック的ポイント解説

神学的に大事にしたテーマ

  • 謙遜と自己捨て
    彼は高い地位と財産を捨て、質素な生活を選びました。これは自分を低くするという福音的価値を体現しています。
  • 教育と宣教の重視
    彼は多くの学校や修道院を設立し、信仰教育や文化的発展を支えました。信仰は頭で学ぶだけでなく、生活全体と結びつくものである、という姿勢がうかがえます。
  • 一致と信頼
    苦しみや非難を受けても、神を信頼し自己否定を恐れない生き方を大切にしました。「侮辱は高貴な魂をより強いものとする」という言葉には、その精神性が表れています。

現代の信仰生活への応用

今日を生きる私たちにとって、フランシスコの生き方は次のような示唆を与えてくれます。

  • 世俗的成功や権力、評価にとらわれず、主との関係を第一にする選択をすること
  • 社会の中で教育や奉仕を通して福音を伝える働きに参加すること
  • 困難・批判・誤解に直面しても、心を揺るがさず、神への信頼を持ち続ける勇気

彼はただ聖書を説くだけでなく、実際の行動を通して信仰を生き抜いた人でした。そのような「行動する信仰」は、現代にも十分に意味があります。

聖フランシスコ・ボルジア|ゆかりの地・書籍・芸術

  • ゆかりの地
    スペイン・ガンディア(Gandía)は彼の生家の地であり、彼が貴族として歩んだ場所です。ローマには彼が晩年を過ごした教会や施設があり、イエズス会関連の建物も多くあります。
  • 著作・伝記
    彼自身が著したものは多くないようですが、伝記や彼の生涯を扱った書物が多くあります(特にイエズス会関係の歴史書において)。
  • 芸術作品
    絵画や彫刻で彼を描いたものがいくつかあります。例えばローマやスペインの教会には、彼の肖像画や祭壇画が残されています。
    また、彼を記念した音楽作品もあります。たとえばフランスの作曲家マルカントワーヌ・シャルパンティエが、彼に捧げたモテットを作曲しています。

まとめ|今日の聖人から学べること

聖フランシスコ・ボルジアは、貴族としての地位と財産を捨て、神と人々への奉仕へと身を投じた司祭にして指導者でした。彼の信仰は、単なる理想ではなく、苦難をも受け入れる強さと謙遜、そして行動に表れるものでした。

彼が創設・支援した学校や宣教の働きは教会に大きな力をもたらし、その名言「侮辱は高貴な魂をより強いものとする」は、現代のわたしたちが苦しみや逆境と出会ったときに支えとなる言葉です。

世俗の価値にとらわれない生き方、日々の信仰と実践の統合を目指す姿勢――それらは、今ここにいる私たちにも深い示唆を与えています。