11月11日は、カトリック教会で「トゥールの聖マルティノ司教」を記念する日です。
ローマ軍人として駐屯していた若き日の彼が、寒さに震える貧者に自らのマントを裂いて与えた――このシンプルで強い行為が、彼の人生を大きく変えました。
そして、軍人から修道士、司教へと歩んだその道には、今日にも響く「隣人愛」のメッセージが込められています。
Contents
マルティノは軍人の家に生まれ、15歳でローマ騎兵となり、フランス(当時のガリア)に派遣されました。
ある雪の日、凍える貧者を見た彼は、自分の赤いマントを二つに裂き、半分を与えました。その夜、夢の中にイエスが現れ、「あなたがマントを与えた男こそ、このわたしである」と語ったと伝えられています。
この体験が彼を深く変え、334年に洗礼を受け、軍を離れて神に仕える決意をしました。
ポワチエで聖ヒラリオ司教と出会い、指導を受けながら修道生活を始めました。
360年ごろ、リギュジェにヨーロッパ初の修道院を設立し、祈りと労働と宣教の生活を実践しました。370年、トゥールの司教に任命されても質素な暮らしを貫き、80人ほどの仲間とともにマルムティエで祈りと奉仕の日々を送りました。
彼は地方を巡り、病人を癒し、社会の乱れを正しながら信仰を広め、民衆に深く慕われました。
397年、マルティノはカンド(現フランス中部)で息を引き取りました。彼の定めた修道生活の規則は、後に聖ベネディクトの会則の模範となり、ヨーロッパ修道制の礎となりました。
また、殉教せずに聖人と認められた初めての人物でもあります。彼の名はフランスをはじめヨーロッパ各地で広まり、今も教会や学校に「マルティン」「マルタン」「マルティーノ」としてその名が残っています。
「私はキリストの兵です。戦うことは許されません。」
これは、彼が軍人として戦いに臨むことを拒んだときの言葉と伝えられます。
戦うよりも助けることを選ぶ――それがマルティノの生涯そのものでした。力や勝利ではなく、愛と慈しみで人を導く生き方の大切さを、私たちに教えてくれます。
トゥールの聖マルティノ司教は、軍人としての力よりも「愛と奉仕」を選んだ人でした。
凍える貧者にマントを分けた行為は、小さな優しさが大きな奇跡を生むことを教えてくれます。
殉教せずとも、信仰と隣人愛を貫いた彼の生涯は、現代に生きる私たちにも「誰かのために分け与える勇気」を思い出させてくれます。