2月12日は、カトリック教会で「聖ユリアヌス」を記念する日です。
彼は「看護者ユリアヌス」とも呼ばれる伝説の聖人です。
若いころに取り返しのつかない罪を犯しながらも、深い悔い改めによって生き方を変えました。
そして、生涯をかけて旅人や貧しい人、病人に尽くした人物として語り継がれています。
罪と赦し、そして奉仕の物語は、今を生きる私たちの心にも強く問いかけてきます。
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ユリアヌスは貴族の家に生まれたと伝えられています。
若くして結婚し、何不自由ない生活を送っていました。
しかしある夜、彼の人生を大きく変える出来事が起こります。
自分の寝室に入ったユリアヌスは、すでに横になっている人影を侵入者だと思い込みます。
とっさに剣を振るい、なんとそれが自分の両親であったことを後で知るのです。
この悲劇は、彼の心に深い傷を残しました。
良心の呵責に耐えられなくなったユリアヌスは、罪を償うためにすべてを捨てようと決意します。
城を出て、妻とも別れるつもりでした。
ところが妻は、「あなたとともに償いたい」と願います。
その言葉に心を打たれ、二人は一緒に新しい人生を歩み始めました。
夫妻は川の近くに住み、旅人を助ける生活を選びます。
橋を渡れない人を運び、寒さに震える人を家に招き入れました。
貧しい人や病人にも分け隔てなく仕えたと伝えられています。
悔い改めは行いによって示されるという姿勢が、彼らの生き方そのものでした。
ある凍えるような夜、川の向こうから助けを求める声が聞こえます。
ユリアヌスは危険を顧みず川を渡り、凍え死にそうな旅人を抱きかかえました。
必死の看護の末、その命は救われます。
回復した旅人は「神はあなたの悔い改める心をお受けになりました」と告げ、幻のように姿を消したといわれています。
この出来事は、彼の罪が神に受け入れられたしるしとして語られてきました。
ユリアヌスの物語は中世ヨーロッパに広まりました。
とくにフランスやイタリアでは、旅人や病人を守る聖人として尊敬を集めます。
現在でもヨーロッパ各地に、彼の名を冠した病院や教会、福祉施設が残っています。
それは赦しと奉仕の象徴としての評価のあらわれです。
伝承の中で最も印象的なのは、助けられた旅人の言葉です。
「神は、あなたの悔い改める心をお受けになりました。」
この言葉は、物語の核心を示しています。
罪そのものよりも、心からの悔い改めと行いが大切であるというメッセージです。
キリスト教において悔い改めとは、ただ後悔することではありません。
方向を変え、新しい生き方へ踏み出すことを意味します。
ユリアヌスはまさにそれを実行した人でした。
ユリアヌスの物語で大切なのは、良心と神のあわれみです。
人は過ちを犯します。
しかし神は、真実な心で立ち返る人を拒みません。
また、彼の生き方は愛のわざの重要性を示しています。
祈るだけでなく、具体的に困っている人を助けること。
それが信仰の実りだという教えです。
現代でも、医療や福祉の現場で働く人々にとって、ユリアヌスは励ましの存在となっています。
フランス各地には、Saint-Julienの名を持つ教会が存在します。
中世美術では、舟や川、病人を抱く姿で描かれることが多いです。
彼は「旅人の保護者」としても知られています。
そのため、巡礼路に建てられた施療院との結びつきも語られています。
聖ユリアヌスは、取り返しのつかない罪を背負いながらも、そこから逃げませんでした。
彼は深く悔い改め、行いによって生き直しました。
その姿は、どんな過去があっても新しい一歩を踏み出せるという希望を示しています。
誰かの痛みに寄り添い、寒い夜に手を差し伸べること。
それこそが信仰の力であり、私たちにもできる小さな奇跡なのです。