
12月29日は、カトリック教会で「聖トマス・ベケット」を記念する日です。
彼は中世イギリスのカンタベリー大司教で、国王ヘンリー2世に逆らった結果、ついには暗殺された人物として知られています。
王の側近として栄光を極めた人生から一転し、教会の自由と自らの良心を守るために命を懸けたその生き方は、今も多くの人の心を打ちます。
Contents
聖トマス・ベケット|プロフィール
- 名前
トマス・ベケット/Thomas Becket - 生没年
1117年または1118年〜1170年 - 出身地・時代背景
イングランド王国ロンドン生まれ。ノルマン朝時代、王権が強まり教会との緊張関係が続いていた時代です。 - 肩書き・役職
カンタベリー大司教、司教、殉教者
聖トマス・ベケットの生涯
青年期からの転機
トマス・ベケットは、ロンドンのノルマン人商人の家に生まれました。若い頃から学問に優れ、ロンドンやパリで教育を受けています。
1141年、彼の才能はカンタベリー大司教テオバルドゥスの目に留まり、秘書として仕えることになりました。ここでトマスは、教会行政や法律の実務を学び、右腕として活躍します。
やがて彼は、国王ヘンリー2世の信頼も得て、王の側近である大法官に任命されました。この頃のトマスは、華やかな衣装を身にまとい、王と狩りや宴を楽しむ、いわば世俗的な成功者でした。
信仰と活動の展開
1162年、大司教テオバルドゥスの死後、ヘンリー2世はトマスを次のカンタベリー大司教に選びます。王は、親友であるトマスなら英国教会を王権の下に置けると考えたのです。
しかし、ここでトマスは大きく変わりました。贅沢な生活を改め、質素な司教として生き始め、教会の自由と権利を守る立場を明確にしたのです。
特に争点となったのは、聖職者を王の裁判権で裁くかどうかという問題でした。
トマスは、教会は神に属するものであり、王の都合で支配されるべきではないと主張します。この姿勢は王の怒りを買い、トマスは命の危険を感じてフランスへ亡命しました。
亡命中、教皇アレクサンデル3世はトマスの立場を支持します。長い交渉の末、1170年、王とトマスは和解し、彼はイングランドへ戻ることができました。
殉教とその衝撃
しかし、帰国後まもなく対立は再燃します。
王の怒りの言葉をきっかけに、4人の騎士がカンタベリー大聖堂に乗り込み、1170年12月29日、トマスは祭壇の前で殺害されました。
大司教が大聖堂で殺されたという出来事は、ヨーロッパ中に大きな衝撃を与えます。
その後、ヘンリー2世は深く悔い改め、トマスの墓前で罪を告白しました。トマスは殉教者として崇敬され、教会の自由を守った象徴的な存在となったのです。
聖トマス・ベケットの名言・エピソードから学ぶ
「イエス・キリストの名と教会の守りのために、私は死をも受け入れる覚悟があります。」
これは、最期を前にしたトマスの決意を伝える言葉です。彼は暴力で争うことを選ばず、剣を取ることもありませんでした。
それでも、自分の良心と信仰に背くことはできないと考え、命を差し出す道を選んだのです。
カトリック的ポイント解説
聖トマス・ベケットが大切にしたテーマの一つが、良心です。権力や立場がどうであれ、神の前で正しいと信じることに従う姿勢は、カトリック信仰の核心でもあります。
また、教会の自由を守ることは、信仰を政治や暴力から守ることでもありました。
現代の私たちにとっても、流れに逆らう勇気や、静かに信念を貫く姿勢は、日々の信仰生活や生き方の指針となります。
聖トマス・ベケット|ゆかりの地・書籍・芸術
トマスの墓があったカンタベリー大聖堂は、中世最大級の巡礼地となりました。多くの人が彼の墓を目指して旅をし、その姿は文学や芸術にも影響を与えています。
特に、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』は、この巡礼文化を背景に生まれた作品として有名です。
まとめ|今日の聖人から学べること
聖トマス・ベケットの人生は、国王の親友という立場から、王に逆らう殉教者へと大きく変化しました。
彼は権力に屈せず、教会の自由と良心を守ろうとした結果、カンタベリー大聖堂で暗殺されるという悲劇的な最期を迎えます。
しかし、その死は無駄ではありませんでした。王が悔い改め、教会の立場が見直されるきっかけとなったのです。
12月29日、聖トマス・ベケットを思い起こしながら、私たちもまた、恐れの中で何を守るべきかを静かに考えてみたいものです。
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