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聖マルガリタ・マリア・アラコック

10月16日は、カトリック教会で「聖マルガリタ・マリア・アラコック」を記念する日です。

彼女は17世紀フランスで生き、イエス・キリストの「み心(聖心ともいう)」への信心を広めた人として知られています。

祈りと病と試練をとおして、神の深い愛にふれたその物語をご一緒にたどってみませんか。

聖マルガリタ・マリア・アラコック|プロフィール

  • 名前
    聖マルガリタ・マリア・アラコック/Margaret Mary Alacoque
  • 生没年
    1647年7月22日~1690年10月17日
  • 出身地・時代背景
    フランス、ブルゴーニュ地方のロトクール(またはラウトクール/L’Hautecourあたり)
    17世紀のフランスは宗教論争や信仰の緊張もあり、信仰を守ることが簡単ではない時代でした。
  • 肩書き・役職
    修道女(聖母訪問会、Visitation の会員)
    “み心の信心”の宣教者(イエス・キリストの聖心への信仰を広めた立役者)

聖マルガリタ・マリア・アラコックの生涯

青年期からの転機

マルガリタは、ブルゴーニュ地方のロトクールで裁判官の娘として生まれました。幼いころから信仰深く、静かに祈ることを好んだと言われています。

8歳のときに父を失い、家庭環境は厳しくなりました。11歳のときに重い病にかかり、4年間ほど床に伏すような闘病生活を経験しました。この時期、彼女は聖母マリアに祈り、「修道者になる」誓願をたてたとも伝えられます。

青年期になると、家族から縁談を勧められることもありましたが、マルガリタは修道生活を選ぶ決意を固めます。 そして1671年、パレ=ル=モニアルにある聖母訪問会(Visitation 会)の修道院に入り、修道女としての道を歩み始めました。

信仰と活動の展開

1673年から1675年にかけて、マルガリタはイエス・キリストより幻視(ビジョン)を何度か経験したと伝えられています。
その中で特に有名なのが、1673年12月27日に、礼拝堂で祈っているときにイエスが彼女の前に現れ、「人びとを愛するために多くの苦痛を忍んだわたしの心を見なさい」と告げられたという体験です。

また、聖体(聖餐、聖体拝領)を通してイエスの心(聖心)への崇敬を深めるようにという使命も与えられたと伝えられます。

マルガリタは最初、この幻視やメッセージを修道院の上層部になかなか理解してもらえず、反対や誤解に苦しみます。

しかし、イエズス会の司祭クロード・ド・ラ・コロンビエールが彼女の信仰と幻視を支持し、励ましてくれました。この協力を得ながら、マルガリタは修道院内で“聖心の祝日”(聖心を記念する日)を静かに祝ったり、聖体礼拝(主の臨在を礼拝する時間)を設けたりするようになります。

また、「第一金曜日の信心」(毎月の最初の金曜日に特別な意向で聖体拝領を行う信心)や、「木曜日の聖時間(聖体礼拝)」などがこの信心の実践として提唱されました。

こうした活動は少しずつ理解を得て、彼女の死後、み心の信心(イエスの聖心への崇敬)はフランス国内のみならず、世界に広がっていきました。

晩年の病や評価

マルガリタは晩年も病を患い、苦しみの中で多くの時間を祈りに捧げました。その病床で、彼女は「私には神だけがあればよい、そしてイエスの心に溶け込ませてください」という言葉を何度も口にしたと伝えられています。

1690年10月17日、彼女は聖名を唱えながら亡くなりました。死後、その生涯と幻視の報告は教会で長く検証され、やがて1864年に列福、1920年に列聖されました。

教皇ベネディクトゥス15世による列聖により、彼女は正式に教会の聖人として認められました。

聖マルガリタ・マリア・アラコックの名言・エピソードから学ぶ

一つ信頼できる出典に基づく言葉として、彼女が死の間際に繰り返したと伝えられる言葉があります。
私には神だけがあればよい、そしてイエスの心に溶け込ませてください

この言葉は、彼女の信仰の核心をよく表しています。すべてのものを手放しても、神だけを必要とする、イエスと一つになることを願う心。彼女の生涯は、この願いに従って祈りと苦しみを受け入れた道でした。

また、彼女が幻視を体験した際、イエスが語った言葉として「人びとを愛するために多くの苦痛を忍んだわたしの心を見なさい」という呼びかけがあります。

これは、ただ感情的な言葉ではなく、イエスの犠牲的な愛を深く心で理解せよという挑戦を伝えるメッセージです。マルガリタはこの言葉に応えようと、その愛を信者たちに伝える道を選びました。

カトリック的ポイント解説

  • テーマ:神のあわれみと愛の心(聖心)
    マルガリタが大切にしたのは、イエス・キリストの心(聖心)が、罪ある人々を愛し、傷つけられ、いやされる心であるという理解です。
    彼女は、神は遠くにいる存在ではなく、「み心(みこころ)」を通して近づいてくださる存在であると信じました。
  • 聖体(聖餐)への深い愛
    彼女は聖体を通してイエスと交わることを大切にし、聖体拝領や礼拝(聖体礼拝)を通して聖心への信心を深めるように勧めました。
  • 「第一金曜日の信心」「木曜日の聖時間」
    これらは、彼女が幻視の中でイエスから教えられた信心実践です。
    第一金曜日:毎月最初の金曜日に聖体を特別な思いで受けること。木曜日の聖時間(Heure Sainte):毎木曜夜、一定時間祈り、イエスがゲッセマネで感じた苦しみに心を合わせること。
  • 現代の信仰生活への適用
    現代に生きる私たちも、忙しさや日々の課題の中で「神との交わり」を忘れがちですが、マルガリタが示したように、定期的な祈りの時間や聖体礼拝を通して、イエスの心を感じ、神の愛に立ち返ることができます。
    また、苦しみや試練の中にあっても、神のみ心に委ねる姿勢は、信仰の支えとなるヒントになります。

聖マルガリタ・マリア・アラコック|ゆかりの地・書籍・芸術

  • ゆかりの地・巡礼地
    パレ=ル=モニアル(Paray-le-Monial)は、彼女が幻視を体験した場所として有名で、訪問会の修道院もあります。
    ローマには、彼女に献堂された教会「サンタ・マルゲリータ・マリア・アラコック教会」があります。
  • 著作・伝記
    『聖マルガリタ・マリア・自叙伝』は、彼女自身の体験や幻視の記録を伝えるものとして知られています(日本語訳もあります)。
    また、伝記書や研究書がいくつかあり、日本語でも『バロックの聖女:マルガリタ・マリア・アラコク』(竹下節子著)などがあります。
  • 芸術・シンボル
    多くの聖画では、彼女がイエスの聖心を見つめる場面や、イエスのみ心を扱う場面が描かれます。彼女は聖心の象徴とともに描かれることが多く、これにより「聖心の使徒」としても認識されています。
  • 宗教会・修道会
    聖マルガリタ・マリアを精神的支柱とする修道会・団体や、彼女の信心を伝える活動を続ける団体があります。たとえば、メキシコで設立された「聖マルガリタ・マリアと貧しい人々のしもべ会」という修道会があります。

まとめ|今日の聖人から学べること

聖マルガリタ・マリア・アラコックは、病や試練という困難を抱えながらも、深い祈りと信仰によって、イエス・キリストの「み心(聖心)」への崇敬を世界に広めた聖人です。

彼女の生涯は、私たちに「神の愛を信じる」こと、「苦しみの中にあっても祈り続ける」こと、「神との親しい交わりを日々育む」ことの大切さを教えてくれます。

私たちも、日常の中で少し時間を取って祈ることで、イエスのみ心に触れ、励まされることができるでしょう。