
11月3日は、カトリック教会で「聖フーベルト司教」を記念する日です。
彼はかつて王国の司法長官として華やかな人生を送った貴族でしたが、狩猟の最中に不思議な体験をして、人生を根本から転換しました。
森の中で出会った十字架を持つ鹿という象徴的な出来事から、信仰に生きる道を選んだその姿には、「人生どこからでも変えられる」という希望が込められています。
今回は、そんな聖フーベルトの生涯と信仰から、私たちも学べるものを探してみましょう。
Contents
聖フーベルト司教|プロフィール
- 名前/英語名
聖フーベルト司教/Saint Hubert of Liège(または Hubertus) - 生没年
約 655〜657年〜727年5月30日(または727〜728年) - 出身地・時代背景
フランス・トゥルーズ出身。メロヴィング朝期のフランク王国の時代、貴族として生まれました。 - 肩書き・役職
司教(最初はマーストリヒト司教、後にリェージュ司教)/「アルデンの使徒」とも呼ばれる宣教者
聖フーベルト司教の生涯
青年期からの転機
フーベルトは貴族の家庭に生まれ、若くして王国の司法長官として活躍しました(資料によれば20歳で司法長官という記録もあります)。しかし、出世の道には陰謀があり、任務を離れることになりました。
その後、公爵ペピンに仕え、結婚して子どもにも恵まれましたが、685年(あるいはその頃)に妻を亡くしたことを契機に、世俗の職務を退き、アルデンの森で隠遁生活を始めます。
「彼を快く思わない者の陰謀によって国王に訴えられ、出世の道は断ち切られた。その後…」という記録が残っています。
その後、狩猟という彼の趣味が深く関わる転機が訪れました。
信仰と活動の展開
ある日、狩猟に出かけた際、十字架を持つ鹿に出会い、神の声を聞いたという伝説があります。
この体験を機に、フーベルトは人生を根本から見直し、司教であったランベルト(聖ランベルト司教)に導かれて司祭となり、その後司教へと任じられました。
司教として、特にアルデンの森やブラバント地方など、かつて異教(偶像崇拝)が残っていた地域の人々に福音を伝え、改宗を促す活動を行いました
また、マーストリヒトからリェージュへの司教座の移転を行い、リェージュに大聖堂を建てたという記録もあります。
晩年の歩みと評価
フーベルト司教は、司教就任後、司教区の収入を貧しい人々に分け与え、断食と祈りに励み、説教においても卓越していたと伝えられています。
727年5月30日、または727〜728年頃、フーベルトはフォーラン(ベルギー・リェージュ近郊)で穏やかにその生涯を閉じました。
彼の記憶は中世に広く受け入れられ、「狩猟者の守護聖人」「動物と自然を尊ぶ人」の姿として語り継がれています。
聖フーベルト司教の名言・エピソードから学ぶ
十字架を持つ鹿との出会いというエピソード。狩猟中に「このままでは地獄に急ぐ」と声を聴いたというものが伝えられています。
このエピソードは、人生の「目が覚める瞬間」を象徴しています。私たちも日常の中で「これは大切ではないか」と気づくことがあるかもしれません。
そのとき、フーベルトのように立ち止まり、方向を変える勇気を持つことが求められます。
カトリック的ポイント解説
神学的に大事にしたテーマ
フーベルト司教は「悔い改め」「福音への転換」「隣人への仕え」を生涯で体現しました。特に狩猟という自己の楽しみに生きていた彼が、神の声を聞いて人生を改めたことは、悔い改めのモデルと言えます。
現代の信仰生活にどう生きているか
現代においても、仕事・趣味・日常生活の中で「このままでいいのか」と立ち止まる機会があります。
フーベルトの生き方は、そんなときに「転換」の大切さを教えてくれます。
また、自然や動物とのかかわりを通して、被造物を尊びながら生きる姿勢も、環境や動物福祉が問われる今日において示唆的です。
聖フーベルト司教|ゆかりの地・書籍・芸術
- ゆかりの地
ベルギー・リェージュ(Liège)には、彼が司教座を置いた大聖堂があります。
また、アルデンの森(Ardennes)やブラバント地方(Brabant)といった、彼が宣教活動を行った地域も聖地とされています。 - 芸術作品
「十字架を持つ鹿」と出会うシーンは多くの画家に描かれ、特に17世紀にはヤン・ブリューゲル(父)/ルーベンスの合作による作品もあります。 - 書籍・伝記
中世には『アクタ・サンクトルム』(Acta Sanctorum)に複数の聖フーベルト伝が収録されています。 - 守護対象
狩猟者、弓兵、犬・動物、森林労働者などとの関連が取り上げられています。
まとめ|今日の聖人から学べること
聖フーベルト司教は、貴族・司法長官という華やかな人生から、狩猟という趣味に没頭し、しかしその中で「神の声に応える」という転機を迎えて人生を刷新しました。
森や動物を舞台にした象徴的なエピソードは、「自然の中でこそ神の語りかけがある」というメッセージを私たちに投げかけます。
日常の忙しさや習慣の中にあっても、「転換」の瞬間を見逃さず、隣人への仕え・自然への敬いを持って生きることの大切さを、彼の生涯は静かに教えてくれています。
私たちも、どんな状況にあっても「新たな一歩を踏み出せる」という希望を、聖フーベルト司教の姿から受け取りましょう。
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