
11月1日は、カトリック教会で「諸聖人」を記念する日です。
キリスト教の歴史の中で、信仰のために命を捧げた殉教者や、神の愛に応えて生きた人々を思い起こす日として定められました。
目立たない日常の中にも神の光を映す人々がいる——この日は、そんなすべての「聖なる人々」を心に刻む大切な日です。
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殉教者の記念からすべての聖人へ
4世紀、コンスタンティヌス皇帝によってキリスト教がローマの国教となると、教会は各地の殉教者を悼み、記念するようになりました。
609年、教皇ボニファティウス4世はローマのパンテオン(神殿)をキリスト教聖堂として再建し、カタコンベ(殉教者の墓)から多くの遺骨を移して祀りました。
この出来事をきっかけに、教会は11月1日を「諸聖人の日」と定めたのです。
やがて「殉教者」だけでなく、神のもとで生きたすべての聖なる人々を記念する日として広がっていきました。
11月1日という日付の意味
当初、殉教者を記念する日は地域ごとに異なっていましたが、9世紀になると教皇グレゴリウス4世によって11月1日に統一されました。
この日付が選ばれた背景には、ヨーロッパの季節の節目である「サウィン祭(ケルトの収穫祭)」の影響もあります。
収穫を終え、新しい季節を迎えるこの時期に、「命の実り」を感謝するという意味が込められています。
つまり、自然と信仰が結びついた、霊的な新年のような日でもあるのです。
西洋における「諸聖人の日」の祝われ方
西ヨーロッパでは「All Saints’ Day」は大切な祝日です。
フランスでは「トゥーサン(La Toussaint)」と呼ばれ、国民の祝日としてお墓参りをする日になっています。
家族は墓地を訪れ、菊の花を供え、亡き人々を思いながら静かに祈ります。
ドイツやポーランドでも、墓前にロウソクを灯し、夜になると墓地全体が温かな光に包まれます。
多くの国ではこの日、教会で厳かなミサが行われ、人々は聖人たちとの「交わり(コミュニオン)」を新たに意識します。
ハロウィン(All Hallows’ Eve)は、この「諸聖人の日」の前夜祭にあたります。
日本における「諸聖人の日」の受け止め方
日本のカトリック教会でも、11月1日は「諸聖人の祭日(諸聖人の祝日)」としてミサが行われます。特に殉教の地・長崎や山口などでは、信仰の先人たちを思い起こす日として大切にされています。
日本の殉教者である「日本二十六聖人」や「殉教者列聖者たち」も、この日にあわせて祈りをささげる対象となります。
また、翌日の11月2日は「死者の日(All Souls’ Day)」であり、この2日間は「すでに神のもとにある人々」と「まだ祈りを必要としている人々」の両方を思い起こす連続した日として過ごされます。
日本の信徒の間では、教会に花を捧げたり、亡くなった家族のために祈ったりする姿が見られます。
現代に生きる「諸聖人の日」の意味
現代の私たちにとって、諸聖人の日は「特別な人々だけをたたえる日」ではありません。名もなき信仰者たち、身近で支えてくれた人々、善意をもって生きた人々――そのすべてを神の愛のもとで思い起こす日です。聖人たちは遠い存在ではなく、「信仰を持って生きる普通の人々の中に宿る光」を示す象徴でもあります。この日をきっかけに、私たち自身も「小さな善を積む生き方」へと心を向けることができるでしょう。
まとめ:諸聖人の日
「諸聖人の日」は、神のもとで生きたすべての聖なる人々をたたえる日です。
4世紀の殉教者の時代から始まり、教皇ボニファティウス4世がパンテオンを聖堂にしたことによって形づくられたこの祝日は、今も世界中で大切にされています。
フランスでは墓地に花を捧げ、日本でも教会で祈りが捧げられます。
聖人たちの生き方を通して、私たちは「小さなことに忠実であること」の尊さを学び、自分の生活の中に神の光を見出すことができるのです。
[参考文献]
・All Saints’ Day – Wikipedia
・The Origins and Customs of All Saints’ Day – AESU.com
・National Shrine of the Immaculate Conception – What Is the Significance of All Saints’ Day?
・カトリック中央協議会『カトリック教会の暦と典礼』
・長崎大司教区公式サイト『諸聖人の祝日と死者の日について』
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