
12月9日は、カトリック教会で「聖ホアン・ディエゴ・クアウトラトアツィン」を記念する日です。
アステカの農夫として静かに暮らしていた彼は、50歳でキリスト者となり、その後、人生を大きく変える出来事に出会いました。メキシコ・テペヤックの丘での聖母マリアの出現――。その“しるし”が刻まれたマントは、今も世界中から巡礼者を集めています。
素朴で誠実な信仰者ホアン・ディエゴの物語は、神の恵みが思いもよらない形で働くことを静かに教えてくれます。
Contents
聖ホアン・ディエゴ|プロフィール
- 名前
ホアン・ディエゴ・クアウトラトアツィン(Juan Diego Cuauhtlatoatzin) - 生没年
1474〜1548年 - 出身地・時代背景
メキシコ・クアウティトラン出身。アステカ文化とスペイン宣教が出会った16世紀初頭。 - 肩書き・役職
農夫・信徒・グアダルペの聖母の出現を伝えた証人
聖ホアン・ディエゴの生涯
アステカの農夫として生まれ、50歳でキリスト者に
ホアン・ディエゴは1474年、現在のメキシコシティ近郊クアウティトランに生まれました。彼はアステカ族の農夫で、素朴で誠実な性格だったと言われています。
50歳のとき、フランシスコ会修道士の教えを受けて洗礼を受け、キリスト者としての新しい歩みを始めます。洗礼名「ホアン(ヨハネ)」を名乗り、妻と共に信仰生活を大切にしていました。
1531年12月9日──聖母マリアの出現
1531年12月9日の朝。ホアン・ディエゴが教会へ向かう途中、テペヤックの丘で突然、明るい光に包まれます。そこに現れたのは、やさしい声で話しかける女性――聖母マリアでした。
聖母はこう告げます。
「この丘に、私のための聖堂を建ててほしい。司教にそれを伝えてください。」
驚いたホアンでしたが、素直な心で司教フアン・デ・スマラガのもとへ向かい、聖母の言葉をそのまま伝えます。
しかし司教は簡単には信じませんでした。
「本当なら、天からのしるしを求めなさい。」。この一言が、のちの“奇跡”の布石となります。
病の叔父と再び現れた聖母──「バラを摘みなさい」
そのころ、ホアンの叔父ベルナルディーノが重病に苦しんでいました。ホアンは司祭を呼びに急いで教会へ向かいますが、また聖母が目の前に現れます。
聖母は穏やかに言います。
「恐れないでください。あなたの叔父は癒やされます。」
そして、聖母は丘の上へ登り、花を摘むように言いました。
それは 12月の真冬。花など咲くはずのない季節でした。ところがホアンが丘に行くと、目の前には色鮮やかなバラの花が一面に咲いていたのです。
ホアンはバラを自分のマント(ティルマ)に包み、司教のもとへと急ぎました。
奇跡のマント──グアダルペの聖母像の出現
司教の前でホアンがマントを開いた瞬間。
- バラの花が一面に広がり
- かぐわしい香りが満ち
- その布の表面には聖母マリアの姿がはっきりと現れた
この出来事は司教たちを驚愕させ、彼らはその場でひざまずきました。
布に刻まれた聖母像は、今もメキシコ・グアダルペの大聖堂に大切に保管され、世界最大級の巡礼地となっています。
聖母像に描かれている姿には、アステカ文化の象徴が巧みに取り入れられ、「新しい民への福音」を示しているとも言われます。

グアダルペの聖母像
その後の奉仕と静かな晩年
奇跡のあと、聖母が現れたテペヤックと大聖堂は巡礼者でにぎわいました。ホアン・ディエゴはその近くに住み、訪れる人々に出現の出来事を語り続けました。
叔父ベルナルディーノの病も本当に癒やされ、人々は聖母の取りつぎとホアンの誠実さに深い敬意を抱くようになります。
1548年、ホアン・ディエゴは静かにこの世を去り、74年の生涯を閉じました。
その後、2002年に教皇ヨハネ・パウロ2世によって列聖され、メキシコとラテンアメリカ全体の信仰の象徴となりました。
聖ホアン・ディエゴの名言・エピソードから学ぶ
信頼できる記録として知られている言葉があります。
「私はあなたの小さな息子です。思いのままにお使いください。」
これは聖母マリアに向けた言葉であり、素朴で深い信頼を示すものです。
彼の姿勢は「従順」「誠実」「謙遜」というキリスト者の美徳をよく表しています。
カトリック的ポイント解説
- しるしを通して神が働くという教え
奇跡のマントは、神が人々に語りかける具体的なしるしとして理解されています。 - 民衆の文化の中に現れる信仰
グアダルペの聖母像には、アステカ文化の象徴が取り入れられており、「新しい民への福音」を象徴します。 - 素朴な信仰の価値
教えを多く知らなくても、心の深い信頼が大きな働きを生むことを示しました。
聖ホアン・ディエゴ|ゆかりの地・芸術・巡礼
- メキシコ・グアダルペ大聖堂
奇跡のティルマ(マント)が保管されている世界的巡礼地。 - 聖母出現の丘(テペヤック)
今も巡礼者が絶えず訪れ、祈りの場となっている。 - グアダルペの聖母像の数々の芸術作品
ラテンアメリカの文化と結びつく象徴的なモチーフ。
まとめ|今日の聖人から学べること
聖ホアン・ディエゴは、社会的には無名の農夫でした。しかし彼の素朴で誠実な心は、神の恵みを受け止め、世界に大きな奇跡をもたらしました。
マントに刻まれた聖母像は「神はいつも、最も小さく見える人を通して働かれる」というメッセージを語っています。
私たちも、どんな小さな歩みであっても、信頼と謙遜をもって神に応えるとき、思いがけない恵みが訪れることを教えてくれます。
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