自分たちの中で最強を誇っていたルシファーが、ミカエルに敗北したのを見て、敵の戦列は動揺しました。そして、恥も外聞も捨てて逃げ出し、悲惨な大混乱が生じました。
ガブリエル vs モーロック
ルシファーがミカエルに一撃を受けたとき、他の戦場でも同じような武勲が立てられていました。
その戦場では、ガブリエルが勇敢に戦い、必死に軍旗を振り、猛々しい王モーロックの陣営に深く突入していました。
モーロックは反撃し、「お前なんか戦車の車輪に縛りつけて引きずり廻してやる」と言いましたが、次の瞬間にはガブリエルに武器を粉砕されました。
さらに、モーロックは腰の辺りを斬り裂かれ、異様な苦痛に耐えかねて大声をあげ、逃げ出していきました。
※モーロック＝古代の中東で崇拝された神
ウリエル、ラファエル、アブデルの活躍
戦線の両翼でも、ウリエルとラファエルが、金剛石の鎧を身にまとった巨大な敵、アデランメレクとアスマダイをそれぞれ打ち破りました。
神に劣ることを受け入れない二人は、鎧と鎖かたびらを通して受けたひどい傷で、全身血だらけになって逃げ出しました。
アブデルもただ見ているだけではありません。神を無視し、冒瀆した敵を求めて奮闘し、アリエルやアリオク、そして狂暴なラミエルに再三襲いかかり、灼熱の苦痛を与えて圧倒しました。
※アデランメレク＝アッシリア起源の悪魔
※アスマダイ（アスモダイ）＝ソロモン王が封印したソロモン72柱の１柱
※アリエル＝神のライオン、神殿の炉
※アリオク＝獰猛な獅子
※ラミエル＝神の雷霆
〈ガブリエル、ウリエル、ラファエル〉
名声を求める叛逆天使と求めない真の天使
ウリエルはアダムに語ります。
なお、この他にも多くの天使たちについて語り、その名を永く地上に伝えることもできるのですが、神に選ばれた天使たちは、天における名声だけで満足しており、人間から称賛されようとは思っていません。
ところで、他の叛逆天使たちは、力において驚くべき働きをしました。また、名声を求める熱意もけっして乏しくありませんでしたが、神の定めによってその名前が天と聖なる記憶から消されました。
したがって、彼らを暗い忘却の淵に名もなき者として葬り去ることにします。なぜなら、どんなに強い力であっても、真理と正義から逸脱していれば、それはもはや称賛に値せず、むしろ軽蔑と汚辱に値するからです。
しかも、そういった者たちは虚栄心にかられて栄光を望み、不名誉な手段を用いてでも名誉を求めようとします。
永遠の沈黙こそ、彼らにとって当然の定めでしょう！
天使がかつて経験したことがなかった悲惨な戦い
自分たちの中で最強を誇ったルシファーが、こんな風にしてミカエルに敗北したのを見て、敵の戦列は動揺していました。そして、恥も外聞も捨てて逃げ出し、悲惨な大混乱が起きていました。
地上には破壊された甲冑のかけらが散乱し、戦車も搭乗者もろとも倒れています。
ルシファーの全軍は今やほとんど防御力もなく、疲れ果てて逃げ出したり、恐怖に襲われて蒼白になって逃亡したりするのみです。彼らが恐怖と苦痛に襲われたのは、実にこの時が初めてでした。
今まで恐怖や逃亡や苦痛とは無縁だった彼らが、その不従順の罪のために、今やこのような苦しい立場に追い込まれました。
一方、神の天使たちは違っていて、整然とした立体的な陣形自分たちの中で最強を誇っていたルシファーが、ミカエルに敗北したのを見て、敵の戦列は動揺しました。そして、恥も外聞も捨てて逃げ出し、悲惨な大混乱が生じました。を作り、どんな剣も通さない堅固な鎧を身に着け、しっかりとした態勢で進撃していきました。
彼らが優位に立ったのは、未だかつて罪を犯したことも神に背いたこともない、純粋無垢の心からでした。だからこそ、疲労の色も見せず、傷の痛みを感じることもなく、毅然として戦えたのです。
やがて、夜が訪れ、天を暗くし、休戦と静寂が訪れました。
