9月9日は、カトリック教会で「聖ペトロ・クラヴェル」を記念する日です。
彼はスペインから海を渡り、南米コロンビアで苦しむ黒人奴隷に生涯をささげました。彼の生き方は、ただ言葉だけでなく、行動そのもので愛を伝えた人として知られています。
今日は「黒人の保護者」と呼ばれた彼の歩みをご紹介します。
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ペトロ・クラヴェルは1580年、スペインのカタロニアに生まれました。
信仰心のあつい両親のもとで育ち、幼いころから司祭になりたいと願っていました。学問にも励み、バルセロナ大学で学んだのち、1602年にイエズス会に入会します。
その後、勉学のためマジョルカ島の修道院に派遣されます。そこで出会ったのが、修道士の聖アルフォンソ・ロドリゲスでした。アルフォンソは新大陸アメリカでの宣教の必要性を語り、クラヴェルの心に火をつけました。
この出会いが、彼の人生を大きく変える転機となったのです。
1610年、クラヴェルは神学生として南米コロンビアのカルタヘーナへ渡ります。
そこは当時、アフリカから連れて来られた黒人奴隷の主要な到着地でした。クラヴェルは、過酷な労働や差別の中で苦しむ人々の姿に深く心を動かされます。
1616年に司祭となると、彼は「大切なことは唇で話すことでなく、手で話すことだ」と語り、奴隷船から下ろされた人々に食物や薬を配り、病人を看病しました。
また、彼らにキリストの愛を伝え、人間としての尊厳を守ろうと尽くしました。その働きぶりから、人々は彼を「黒人の保護者」と呼ぶようになりました。
40年以上にわたり、クラヴェルは毎年数千人に及ぶ奴隷たちに寄り添い、洗礼を授け、心身を支え続けました。その数は30万人以上にのぼるとも言われています。
晩年のクラヴェルは、長年の激務と病気により体力を失いました。しかし、彼がまいた愛の種は人々の心に残り、死後すぐに「聖人」として慕われるようになりました。
彼は1654年に亡くなりますが、その後もカトリック教会によって列聖され、記念日は毎年9月9日に定められています。
クラヴェルの有名な言葉に、「大切なことは唇で話すことでなく、手で話すことだ」というものがあります。これは単なる言葉の力ではなく、行動そのものが愛を示すという信念を表しています。
この言葉は、貧しい人や弱い立場の人々に寄り添い、具体的な助けを差し出すことの大切さを教えてくれます。現代に生きる私たちにとっても、「言うだけでなく、行動で愛を示す」という姿勢は大きなヒントになります。
クラヴェルが大切にしたテーマは「隣人愛」です。これは神学的には「神の愛を人を通して分かち合うこと」と言えます。難しい言葉で言えば「博愛」ですが、彼の場合はとても具体的でした。
奴隷として扱われた人々を人間として尊重し、助け、励ましたことは、まさに神の愛を形にした行いでした。現代においても、社会の中で弱い立場に置かれた人を無視せず、声をかけたり、ちょっとした助けをすることが、クラヴェルの生き方につながっていくのではないでしょうか。
クラヴェルの活動の中心地は、南米コロンビアのカルタヘーナです。現在も彼の遺体はカルタヘーナの聖堂に安置され、多くの巡礼者が訪れます。
また、彼の生涯を描いた伝記や研究書は数多く出版されており、映画や芸術作品でも「奴隷の友」としての姿が表現されています。旅行者にとってもカルタヘーナは、彼の足跡をたどれるスピリチュアルな場所となっています。
聖ペトロ・クラヴェルは、遠いスペインから海を渡り、見知らぬ土地で最も弱い立場の人々に寄り添い続けました。彼が「黒人の保護者」と呼ばれたのは、言葉だけでなく、行動で愛を示したからです。
私たちも日々の暮らしの中で、困っている人に手を差し伸べる小さな行動ができるのではないでしょうか。今日の聖人を思い起こすことで、愛を具体的に生きる勇気をいただけると思います。