8月8日は、カトリック教会で「聖ドミニコ」を記念する日です。
「法律の道から説教の道へ。人生をかけて“神の言葉”を伝えた男」
聖ドミニコは、もともと法律を学んでいた青年でしたが、人びとの魂を救うため、神さまの道に生きることを決意します。やがて彼は、説教によって信仰を伝える修道会「ドミニコ会(説教兄弟会)」を創設し、その教えと生き方は、今も世界中のカトリック教会で大きな影響を与えています。
情熱と祈りに生きた聖ドミニコの物語を、今日はご一緒にたどってみましょう。
Contents
聖ドミニコは中世ヨーロッパの時代に生きたスペインの聖人です。貴族の家に生まれましたが、その特権に甘んじることなく、真理を探し求める熱心な学び手であり、情熱的な説教者でもありました。
聖ドミニコは、裕福な家庭に生まれ、若い頃はサラマンカ大学で法律や神学(かみさまのことを深く学ぶ学問)を学んでいました。彼は非常に頭の良い青年で、学者として将来を約束されていたともいわれています。
しかし、世の中の不正や人びとの苦しみを目にしたとき、彼の心に変化が生まれます。「人びとの心に、ほんとうに必要なのは“愛とまこと”ではないか」。そう思った彼は、神への信仰を選び、25歳で司祭となります。
当時のヨーロッパでは、「アルビ派」と呼ばれる異端の教えが広まっていました。これは、善と悪をそれぞれ別の神が支配しているという考えで、肉体や物質の存在を否定的にとらえていました。
教会はその考え方を危険視し、正しい信仰へ導こうと試みます。その役目を託された一人が、聖ドミニコでした。彼は、豊かな衣を脱ぎ、持ち物を手放し、貧しいキリストにならって歩きます。そして、町から町へと説教をしながら人びとに「神の愛とあわれみ」を伝えていきました。
その言葉はとても力強く、心を打つもので、多くの人が再び神を信じるようになったといわれています。
ドミニコは、説教の最後には必ず「ロザリオの祈り」を勧めました。これは、聖母マリアとともにイエス・キリストの生涯を思い起こしながら唱える祈りです。彼の働きによって、この祈りは広く教会に根付き、今でも世界中の信者に親しまれています。
さらに1206年には、フランスに女子教育を目的とした修道院を設立。のちに、彼のもとに志を同じくする仲間が集まり、1216年には正式に「説教兄弟会(ドミニコ会)」として教皇から認可されました。
ドミニコ会は、学びと説教を重んじ、のちに多くの偉大な神学者たちを輩出することになります。
ドミニコは1221年、イタリアのボローニャで帰天します(亡くなります)。その生涯を通して、信仰の真理を守り伝え、貧しくとも誠実に生きる姿は多くの人に感動を与えました。彼は後に列聖(聖人として認められること)され、カトリック教会において非常に大切にされる存在となります。
聖ドミニコの生き方には、今を生きる私たちにも響く知恵がたくさんあります。
彼自身の直接の言葉としては多くが残されていませんが、彼の精神を表す比喩として、現代のドミニコ会の修道士たちはこんなふうに語ることがあります。
「私は“本”と“木”のあいだに生きたい」
この言葉は、ドミニコ会の霊性を象徴的に表現したものです。
「本」は、真理を学び続けること。
「木」は、静かな祈りと神とのつながりを意味します。
つまり、「知ること(学び)」と「祈ること(信仰)」のバランスを大切にする——それが、聖ドミニコの生き方だったのです。
また、彼の行動でもう一つ注目したいのは、説教のあとに必ず「ロザリオの祈り」をすすめていたことです。この祈りは、聖母マリアとともにイエス・キリストの出来事を思い起こしながら唱えるもの。心を静かにし、信仰を深める時間になります。
聖ドミニコの信仰の柱は、何といっても「説教」と「祈り」です。彼は、神さまの愛のメッセージを言葉にして人びとに伝えることを、何よりも大切にしました。
また、「ロザリオの祈り」の普及にも大きく貢献しました。これは単なる祈りの言葉ではなく、心を神に向け、静かに人生を見つめ直す時間でもあります。彼にとって祈りとは、“神さまの愛に耳を傾けること”だったのです。
さらに、ドミニコ会が重視する「真理の探究」や「教育への情熱」は、カトリック教会全体に大きな影響を与えました。今日でも、多くのカトリック大学や神学校がその精神を受け継いでいます。
聖ドミニコは、多くの芸術家たちによって絵画に描かれてきました。
たとえば、初期ルネサンスの画家フラ・アンジェリコは、祭壇画やフレスコ画の中で聖ドミニコの場面を繰り返し描いており、その中には祈りや説教の場面も含まれています。とくに「聖母子と聖ドミニコ」などがよく知られています。
また、スペインの画家エル・グレコは、神秘的な雰囲気をまとった「祈る聖ドミニコ」の絵を複数描いており、その深いまなざしや静寂な構図は、今もなお多くの人を惹きつけています。
聖ドミニコは、人生のすべてをかけて「神の言葉」を伝え続けた人でした。学ぶことと祈ること、どちらか一方ではなく、その両方を大切にしながら、まっすぐに信仰の道を歩み続けました。
そして彼自身も、常に身軽に旅をし、貧しく生き、どこに行っても人びとに希望と励ましの言葉をかけ続けました。その誠実な姿勢は、今も多くの人の模範となっています。
私たちも、知識だけでなく心の静けさを求めながら、まっすぐに人と向き合う勇気を持ちたいものですね。
明日もまた、新しい聖人の物語をご紹介します。どうぞお楽しみに。