6月29日は、カトリック教会で「聖ペトロ使徒」を記念する日です。
ペトロはイエスから「教会の岩」と呼ばれ、教会の礎として働いた最初の弟子の一人です。
弟アンデレに導かれてイエスと出会い、弱さを抱えながらも使命に生き抜いた彼の姿は、私たちの日常にも深い励ましを与えてくれます。
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ペトロは貧しい漁師家庭に生まれ、弟アンデレと力を合わせて漁をしていました。自然の厳しさを知る生活でしたが、彼は信心深く、心はまっすぐな人物だったと伝えられています。
ある日、湖で漁をしていたペトロにイエスが声をかけます。「人をすなどる者にしよう」(マタイ4.19)
この言葉を聞いたペトロは、網を捨ててイエスに従いました。
ここから、彼の人生は大きく動き出します。
ペトロは、弟子たちの中でも特にイエスに近い存在でした。彼の名前は本来シモンでしたが、イエスは彼を「岩」を意味する“ペトロ(ペトロス)”と呼びました。
イエスは彼に向かって次のように語りました。
「あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。」(マタイ16.18)
「天の国の鍵」を授けるとまで言われ、ペトロは教会の土台となる使命を受けました。
しかし、ペトロは決して完璧な人物ではありませんでした。嵐の湖で恐れて沈みかけたり、イエスの受難を前に三度否認したりと、弱さを何度も見せています。
それでも復活のイエスはペトロに向かって「わたしの羊を飼いなさい」と語り、彼を再び立ち上がらせました。
このエピソードは、「失敗しても、愛に根ざしてやり直せる」というペトロらしい信仰の姿を象徴しています。
67年、ネロ皇帝によるキリスト教迫害が起こると、仲間のすすめでペトロはローマから逃げようとしました。しかし、道中で十字架を背負うイエスと出会います。
ペトロは問いかけます。「クオ・ヴァディス・ドミネ(主よ、どこへ行かれるのですか)」
イエスは答えます。
「わたしは再び十字架につけられるためにローマへ向かうところだ。」
この言葉を聞いたペトロは、自分の使命を悟り、再びローマへ戻りました。
そして、自ら望んで逆さ十字架につけられて殉教したと伝えられています。「主と同じ姿で死ぬことは恐れ多い」と考え、逆さまを願ったという伝承は、深い謙遜を物語っています。
ペトロが処刑された場所には、現在のサン・ピエトロ大聖堂が建てられています。
ペトロに関する言葉で、聖書に明確に残るものの一つが次の告白です。
「あなたはメシア、生ける神の子です。」(マタイ16.16)
この告白は、イエスが「あなたはペトロ」と語った場面につながります。
ペトロは弱さを抱えながらも、深い信頼をもってイエスを“神の子”と認めた人物です。その信仰告白こそが、彼を教会の礎にふさわしい者としたのでしょう。
ペトロが生涯を通して大切にしたテーマは、「ゆるしと回復」、そして 「教会の一致」 です。
現代の私たちにも、「どんな弱さがあっても、神はやり直しのチャンスをくださる」「自分のまわりの小さな共同体を大切にする」という生き方を教えてくれます。
聖ペトロ使徒は、弱さを抱えながらもイエスに従い続け、ついには教会の岩として使命を果たした人物です。
弟アンデレが静かに導いた道の上で、彼は大きな役割を担うよう成長しました。三度否認する弱さがあっても、復活のキリストの愛によって立ち上がり、ローマで殉教するまで福音を語り続けました。
私たちも失敗や不安の中でも、神のゆるしと導きを信じて歩むことができます。ペトロは、弱さの中にこそ神の力が働くという希望を示してくれる聖人です。