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カルメル山の聖母マリア

7月16日は、カトリック教会で「カルメル山の聖母マリア」を記念する日です。

ここで疑問に感じるのは、今日の聖人が本当に「カルメル山の聖母マリア」なのか、ということでしょう。

カルメル山の聖母マリアとは、カルメル山に住んでいた別のマリアではありません。

イエスの母である聖母マリアを、カルメル会との深い結びつきの中で呼ぶ称号です。

カトリック教会の一般暦では任意の記念日ですが、カルメル会では共同体を守る聖母の重要な祝日として、より盛大に祝われています。

今日の聖人は「カルメル山の聖母マリア」なのか

イエスの母マリアを記念する日

7月16日に記念されるのは、イエスの母である聖母マリアです。

カルメル山の聖母」という呼び方は、マリアが何人もいるという意味ではありません。

同じ聖母マリアを、その土地や出来事、信仰上の役割との関係から呼び分けた称号です。

たとえば、「ルルドの聖母」や「ファティマの聖母」と呼ばれても、別々の女性を指しているわけではありません。

「カルメル山の聖母」も同じで、カルメル山とカルメル会に結びついた聖母マリアを表しています。

特定の聖人の命日ではない

通常、「今日の聖人」では、ある聖人が亡くなった日や、その生涯に関係する日を記念します。

しかし7月16日は、マリアの命日を記念する日ではありません。

カルメル会が、聖母マリアから受けた保護と恵みに感謝し、マリアを自分たちの守護者としてたたえる日です。

この祝日は、カルメル会がマリアに感謝し、マリアの保護を思い起こす記念として発展しました。

カルメル山とはどのような場所なのか

イスラエル北部に延びる美しい丘陵

カルメル山は、イスラエル北部の地中海沿岸に延びる丘陵です。

長さは約24キロメートルあり、最高峰は約524メートルに達します。

山と呼ばれていますが、一つの尖った峰というより、緑豊かな丘陵が連なる土地です。

聖書では、その美しさや豊かさが、神の祝福を表すものとしてたびたび用いられています。

預言者エリヤゆかりの山

カルメル山は、旧約聖書の預言者エリヤと深く結びついています。

『列王記上』では、エリヤがカルメル山でバアルの預言者たちと対峙し、イスラエルの民に、まことの神へ立ち返るよう求めました。

そのためカルメル山は、神への忠実さ、祈り、回心を象徴する山となりました。

カルメル会では、エリヤを修道生活の霊的な父のような存在として仰いでいます。

カルメル会はどのように始まったのか

十字軍時代の隠修士たち

12世紀末から13世紀初めごろ、十字軍によって聖地を訪れた西方のキリスト教徒の中から、カルメル山に残って祈りの生活を送る人びとが現れました。

彼らは町の中で活動するのではなく、カルメル山の洞窟や小さな庵に住みました。

沈黙と祈りのうちに神を求める、隠修士としての生活です。

やがて彼らは一つの共同体となり、エルサレム総大司教アルベルトから生活の規則を与えられました。

この会則が、後のカルメル会の基礎となりました。

特定の一人が創立した修道会ではない

フランシスコ会にはアシジの聖フランシスコ、ドミニコ会には聖ドミニコという創立者がいます。

しかしカルメル会には、それに当たる一人の創立者がいません。

カルメル山で祈りの生活を送っていた複数の隠修士たちが、少しずつ一つの修道家族を形づくりました。

そのためカルメル会は、聖地の山と祈りの共同体から生まれた修道会といえます。

なぜカルメル会は聖母マリアを大切にするのか

最初の聖堂をマリアにささげた

カルメル山に住んでいた隠修士たちは、自分たちの庵の中央に小さな聖堂を建て、それを聖母マリアにささげました。

このことから、彼らは「カルメル山の聖母マリアの兄弟たち」と呼ばれるようになります。

現在もカルメル会の正式名称は、「カルメル山の聖母マリアの兄弟会」という意味を持っています。

つまり、カルメル会とマリアの関係は、後の時代に付け加えられたものではありません。

カルメル会が形づくられた最初のころから、マリアは共同体の中心に置かれていました。

マリアを祈りと観想の模範とした

カルメル会がマリアを大切にする理由は、カルメル山がガリラヤに近かったからだけではありません。

マリアの生き方そのものが、カルメル会の目指す祈りの生活と重なるからです。

福音書のマリアは、神の言葉を聞き、すぐにすべてを理解できなくても、出来事を心に納めて思い巡らしました。

カルメル会は、その姿に、観想する人の模範を見ています。

観想とは、特別な幻を見ることだけではありません。

神の言葉を静かに受け取り、祈りの中で心にとどめ、日々の生活で神の望みに応えていくことです。

カルメル会は、マリアを「自分たちがなりたいと願う姿を完全に示す方」と受け止めています。

「母」であり「姉」であり「守護者」

カルメル会は、マリアを遠くから見上げる女王としてだけではなく、母、姉、守護者として親しく仰いできました。

母として、キリストへ向かう子どもたちを支える方。

姉として、同じ信仰の道を先に歩んだ方。

守護者として、祈りに生きる共同体を見守る方です。

「カルメル山の聖母マリア」という称号には、この家族のような近い関係が込められています。

なぜ7月16日に記念するのか

カルメル会がマリアの保護に感謝する日

この祝日は、もともとカルメル会の中で、マリアから受けた恵みと保護に感謝するために始まりました。

14世紀末ごろからイギリスで祝われるようになり、やがて7月16日がカルメル会の重要な祝日として定着しました。

1609年には、カルメル会の総会によって7月16日が会の主要な祝日とされました。

聖シモン・ストックとスカプラリオの伝承

7月16日は、カルメル会総長だった聖シモン・ストックに聖母マリアが現れ、スカプラリオを授けたという伝承とも結びついています。

スカプラリオとは、もともと修道服の一部で、肩から前後に垂らす布のことです。

後には小さな布を身につける信心のしるしとして、一般の信徒にも広まりました。

ただし、スカプラリオは身につけるだけで自動的に救われるお守りではありません。

マリアに倣ってキリストに従い、祈りと信仰に生きる決意を表すしるしです。

教皇ヨハネ・パウロ2世も、スカプラリオはカルメル会の霊性とマリアへの奉献を表す「衣」であると説明しています。

「カルメル山を登る」とはどういう意味か

実際の登山だけを意味するのではない

カルメル会の霊性では、山を登ることが、神へ近づく信仰の歩みを表します。

もちろん、カルメル山へ実際に登ること自体にも巡礼としての意味があります。

しかし大切なのは、心の中で神へ向かって登っていくことです。

執着や自分中心の思いを少しずつ手放し、祈りによってキリストに近づく道を表しています。

アビラの聖テレジアと十字架の聖ヨハネ

16世紀には、アビラの聖テレジアと十字架の聖ヨハネが、カルメル会の生活を改革しました。

二人は、修道生活の外側だけを整えるのではなく、神との深い一致を目指す内面の祈りを重んじました。

特に十字架の聖ヨハネは、『カルメル山登攀』という著作で、魂がさまざまな執着から自由になり、神との一致へ向かう道を説いています。

中世の聖ボナヴェントゥラも『魂の神への道程』で、被造物から神へと進む霊的な道を示しました。

どちらにも共通するのは、信仰を一か所にとどまるものではなく、神へ向かって進み続ける道として捉えることです。

カルメル山の聖母マリアから学ぶこと

静かに神の言葉を受け止める

現代の生活は、情報や言葉にあふれています。

何かを聞けば、すぐに答えや判断を求めがちです。

しかしマリアは、すぐには理解できない出来事も心に納め、祈りのうちに思い巡らしました。

カルメル山の聖母は、沈黙することは何もしないことではなく、神の働きを受け取るための大切な時間だと教えてくれます。

マリアのもとにとどまるのではなく、キリストへ進む

カルメル会のマリア信心の目的は、マリアだけを見つめて終わることではありません。

マリアに支えられ、マリアに倣いながら、キリストへ近づくことです。

教会の祈りでは、キリストこそ登るべき聖なる山として表されます。

マリアは、自分へ人を集めるのではなく、いつも御子イエスへ導く方です。([バチカン][9])

カトリック的ポイント解説

カルメル山の聖母マリアの記念で大切なのは、マリアの保護観想の祈りです。

マリアの保護とは、困難が一切起こらないようにしてもらうことではありません。

苦しみや迷いの中でも、キリストから離れずに歩めるよう、マリアの祈りによって支えていただくことです。

また観想とは、修道院に入った人だけの特別な祈りではありません。

日々の生活の中で神の言葉に耳を傾け、出来事を祈りのうちに受け止め、自分の生き方をキリストへ向け直すことです。

カルメル山の聖母マリアは、静かな祈りの中で神に心を開き、キリストへ登っていく道を示しています。

カルメル山の聖母マリア|ゆかりの地・芸術

カルメル山とステラ・マリス修道院

最も大切なゆかりの地は、イスラエル北部のカルメル山です。

現在のハイファ周辺には、カルメル会のステラ・マリス修道院があり、カルメル会発祥の地を訪ねる巡礼の中心となっています。

「ステラ・マリス」は「海の星」を意味し、聖母マリアを表す伝統的な呼び名です。

スカプラリオを持つ聖母像

芸術では、カルメル山の聖母マリアは、幼子イエスを抱き、手に茶色のスカプラリオを持つ姿で描かれることがあります。

その姿は、マリアがカルメル会を守り、キリストへ導く方であることを表しています。

また、茶色や白のカルメル会修道服を着た修道者たちとともに描かれることもあります。

まとめ|今日の聖人から学べること

7月16日に記念される「カルメル山の聖母マリア」とは、別の聖母ではありません。

カルメル会との結びつきの中で呼ばれる、イエスの母マリアです。

十字軍時代、カルメル山に集まった隠修士たちは、聖母にささげた聖堂を建て、自分たちを「カルメル山の聖母マリアの兄弟たち」と呼びました。

彼らは、神の言葉を心に納めて思い巡らしたマリアを、祈りと観想の模範としました。

カルメル山の聖母マリアは、静かな祈りの中で神に耳を傾け、マリアに支えられながらキリストへ近づく道を教えてくれます。