盲人の寓話
ピーター・ブリューゲル〈盲人の寓話〉
「あなたの弟子たちは、なぜ昔の人々の言伝えを破るのですか。彼らは食事の時に手を洗っていません」
イエスは答えて言われた、
「なぜ、あなたがたも自分たちの言伝えによって、神のいましめを破っているのか。神は言われた、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。
それだのに、あなたがたは『だれでも父または母にむかって、あなたにさしあげるはずのこのものは供え物です、と言えば、父または母を敬わなくてもよろしい』と言っている。こうしてあなたがたは自分たちの言伝えによって、神の言を無にしている。
偽善者たちよ、イザヤがあなたがたについて、こういう適切な預言をしている、
『この民は、口さきではわたしを敬うが、
その心はわたしから遠く離れている。
人間のいましめを教として教え、
無意味にわたしを拝んでいる』」
それからイエスは群衆を呼び寄せて言われた、
「聞いて悟るがよい。口にはいるものは人を汚すことはない。かえって、口から出るものが人を汚すのである」
そのとき、弟子たちが近寄ってきてイエスに言った、
「パリサイ人たちが御言を聞いてつまずいたことを、ご存じですか」
エスは答えて言われた、
「わたしの天の父がお植えにならなかったものは、みな抜き取られるであろう。 彼らをそのままにしておけ。彼らは盲人を手引きする盲人である。もし盲人が盲人を手引きするなら、ふたりとも穴に落ち込むであろう」
ペテロが答えて言った、
「その譬を説明してください」
イエスは言われた、
「あなたがたも、まだわからないのか。 口にはいってくるものは、みな腹の中にはいり、そして、外に出て行くことを知らないのか。しかし、口から出て行くものは、心の中から出てくるのであって、それが人を汚すのである。というのは、悪い思い、すなわち、殺人、姦淫、不品行、盗み、偽証、誹りは、心の中から出てくるのであって、これらのものが人を汚すのである。しかし、洗わない手で食事することは、人を汚すのではない」
イエスはそこを去って、ガリラヤの海べに行き、それから山に登ってそこにすわられた。すると大ぜいの群衆が、足なえ、不具者、盲人、おし、そのほか多くの人々を連れてきて、イエスの足もとに置いたので、彼らをおいやしになった。
イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、
「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。しかし、彼らを空腹のままで帰らせたくはない。恐らく途中で弱り切ってしまうであろう」
弟子たちは言った、
「荒野の中で、こんなに大ぜいの群衆にじゅうぶん食べさせるほどたくさんのパンを、どこで手に入れましょうか」
イエスは弟子たちに「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります。また小さい魚が少しあります」と答えた。
そこでイエスは群衆に、地にすわるようにと命じ、七つのパンと魚とを取り、感謝してこれをさき、弟子たちにわたされ、弟子たちはこれを群衆にわけた。一同の者は食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七つのかごにいっぱいになった。 食べた者は、女と子供とを除いて四千人であった。
(マタイによる福音書)
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