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ギュスターブ・ドレ「ミルトン失楽園」ドレ〈ミルトン失楽園〉

ルシファーの軍勢、水晶の城壁から地獄へ

独り子は雷霆に撃たれて呆然としているシファーの軍勢を追いたててゆき、憤怒の形相ものすごく、ついに天の境にある、水晶の城壁まで駆りたててゆきました。

すると、水晶の城壁は大きく内側に開きました。見ると、はるか下方に荒涼たる深淵が口をあけています。ルシファーの軍勢は慄然としてたじろぎ、一時止まりましたが、後からはさらに恐ろしい独り子が迫ってきます。

ついにやむなく、天の端の一角から身を躍らして下方へ飛びおりざるをえません。永遠の怒りが炎となって彼らをとりまき、底知れぬ奈落まで落ちてゆきます。

実に九日の間、ルシファーたちは墜ち続ける

『地獄』は口を開き、彼ら全員を呑みこむと、ただちに口を閉じました。消えることのない業火に包まれた地獄こそ、ルシファーたちにはふさわしい住処であり、悲哀と苦痛の家です。

叛逆者がいなくなり、天は歓喜しました。城壁は直ちにふさがりました。

勝利を収めた独り子は、凱旋の戦車に乗って引返してきました。彼の救世主としての偉業を息をひそめて見ていた天使たちは、全員、どっと歓声をあげて迎えました。どの階級の天使といわず皆大きな株欄の枝をかざして進みながら、凱歌を唱し、独り子に向かい、ほめ讃えたのです。

「勝利者なる王よ、御独り子よ、世嗣よ、われらが主よ、主権を与えられし者よ、支配者たるにふさわしき者よ」

地獄に落ちるルシファーたちドレ〈堕天使〉

エピローグ(アダムを諭すラファエル)

「御子は歓呼の声に迎えられ、凱旋の姿も凛々しく、天の真只中を戦車に乗ったまま駈け抜け、いと高き王座に坐しておられた力強き父なる神の宮居と神殿へ、と帰還された。

そして、神によって栄光の座に招じ入れられたもうたが、今もなお、神の右手に当たる祝福の座についておられるのだ。

本来なら人間には秘しておいて、話すべきではなかったかもしれない。

わたしは、天に生じた不和、天使たちの間に起った天上のアルマゲドン、余りにも高い野心を抱いてルシファーと共に叛逆し、最後に地獄に墜ちた者たちのことを話した。

わたしは、過去の出来事を知ることによって今後の戒めとしてもらいたい、と思ったからに他ならない。

そのルシファー、つまり今や地獄に落ちて名が変わったサタンが、実は、今お前(アダム)の幸福な境涯を妬み、何とかしてお前をも誘惑し、神から引き離し、神に服従するのをやめさせようとしている。

というのも、幸福を失わさせることによって、お前にも自分と同じ刑罰を、永遠の悲哀を、味わせてやろうという魂胆なのだ。

そうやって、もしひとたびお前を自分の苦悩の道連れにすることができれば、それこそいと高き神に対する侮蔑となり、彼にとってはこんな慰めは、そして快い復讐は、他にはない。どんなことがあっても彼の誘惑に耳を傾けてはならない。

弱いイヴをも戒めておくがよい。叛逆の報いがどんなものか、恐ろしい実例を通じてお前は知ったはずだ。それを無駄にしてはならない。

彼らは、堕落するはずではなかったにもかかわらず、堕落した。そのことを忘れずに、罪を犯さないよう、気をつけてもらいたい」

ラファエルはこう諭すと、天に帰って行きました。

サタンの野望は、エデンの園でのイブの誘惑へと進んでいきます。

失楽園(堕天編)天使間アルマゲドン END
失楽園(原罪編)へつづく

エデンの園を見下ろすサタンドレ〈エデンの園を見下ろすサタン〉