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失楽園(天使間アルマゲドン)

御子の決意「ルシファーの軍勢を罰するのは私」

「汝ら、聖徒たちよ、輝けるその装いのまま、静かに立っているがよい。武装せる天使たちよ、そのまま、ここに立っているがよい。

汝らは今日は戦いを休むのだ。汝らは今日まで神の正しい大義のために恐れず怯まず、忠実に戦ってきた。神はそのことを良しとしておられる。汝らは損害も受けたが、それに屈せず敵にも損害を与えてくれた。

だが、この呪うべき徒党を罰する仕事は、汝ら以外の者の役目である。復讐は神のものであり、もしくは神の定めたもうた者のみのものだ。

今日の仕事では数は問題ではなく、大軍の必要もない。汝らは、私がこのルシファーの軍勢に向かって神の怒りを注ぐのを、ただ立って見ておればよい。

彼らが蔑み妬んでいるのは、汝らではなくてこの私なのだ。その憤怒が向けられているのも、この私だけに対してなのだ。

なぜなら、天においていと高き王権と権威と栄光とを自らのものとしたもう父なる神が、そのご意志のままに、私を高い地位につけたもうたからだ。したがって、神は彼らを罰する役目を私に授けられた。

しかし、それは私一人が彼ら全員を敵にまわして戦場で相まみえた場合、果してどちらが強いか、それを試したいという彼らの願いを充たしてやることにもなるはずだ。

彼らは一切をただ武カの点から評価し、他のいかなる美点も望もうとはせず、自分たちより優っている者のことなど、眼中にない。だから、私も力の戦い以外のいかなる戦いも、彼らには許さぬつもりだ」

こう言うと、独り子の顔は恐ろしい表情に変り、敵に向かって注がれた怒りが溢れており、その余りの厳しさに誰も仰ぎ見ることもできません。

ルシファーの軍勢、独り子の凄まじい力に呆然自失する

独り子に従う四人の天使は、すぐさまその星のような眼をちりばめた翼を広げます。その下には恐ろしい影が長くつらなり、御子の戦車の輪が、激流の音か、軍勢の怒号のような凄じい音をたてて、猛烈な勢いで回転しはじめました。

独り子は、『夜』のように黒々と、ただまっしぐらに背信の敵軍をめがけて進んでいきます。その燃えさかる車輪に圧され、さしもの天も隅々まで震えあがります。

瞬く間に独り子は敵軍の真只中に到達すると、右手にしっかと雷霆をつかみ、前方に向かって投げつけました。

それは、敵軍一人一人の魂に恐るべき一撃となって突き刺さります。彼らは、ただもう呆然自失。すべての抵抗力を失い、すべての勇気を失い、持っていた武器を手放しました。

御子は、それらの兜や楯を踏み潰して進みます。

眼をちりばめた四つの顔をもつ四人の天使からも、同じく無数の眼をちりばめた生ける車輪からも、御子の怒りの矢が放たれ、彼らの前後左右にこれまた嵐のように降り注ぎます。

あるーつの力がこれらの眼を支配しており、そして各の眼は、一閃稲妻を放って、呪われた天使たちに向かい、破壊の炎を投じます。

ルシファーの軍勢はことごとく萎えはて、血気もかれはて、ただもう疲れはて、勇気も意気もなく、倒れ伏すのみ。しかし、独り子の方はまだその力の半分も出していないのです。

そして、独り子は雷建を投ずるのを急に途中でやめました。彼らを滅亡させてしまうのではなく、ただ天国から根こそぎ追放するのが神の意だったからです。