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失楽園(天使間アルマゲドン)

父なる神の戦車

全能の神の戦車は轟音を発し、炎をあげています。車輪は自らの霊によって動き、四人の智天使がその先導をつとめます。各天使は、それぞれ驚くべき四つの顔を持ち、その体にも、翼にも、くまなく星のような眼が輝いています。

緑柱石の車輪にもまた眼があり、これらの眼の間からは炎が噴き出でいます。頭上には水晶のような空が拡がり、そこには、澄みきった琥珀と虹の七色をちりばめた青玉の王座があります。

独り子はきらめく宝石に装われた神の武具を身に鎧い、戦車に乗りこみます。その右手には鷲の翼をもった『勝利』が座を占め、腰からは弓と三箭の雷霆の入った箙(えびら)が垂れさがっています。

独り子の体のあたり全体からは、濠々たる煙と、ひらめく炎と、恐ろしい火花とが、すさまじい勢いで渦を巻きながら噴き出しています。

神の独り子の出撃

独り子は、幾千、幾万の聖徒の大軍にまもられて、前へ、前へと燦然と輝きながら出撃して行きます。また、左右に半々に分かれた二万に及ぶ神の戦車が進撃してゆきます。

独り子は、智天使の翼に乗り、水晶のように澄んだ蒼穹を、青玉の王座に坐したまま高々と翔けていきます。天における救世主の兆である大きな旗が天使たちによって掲げられ、ひるがえっています。

独り子の姿は、遠くから眺め見ることができましたが、最初にそれに気づいたのは味方の軍勢です。一同は思いがけぬ光景に接して驚喜しました。独り子の指示をうけたミカエルは、左右の両翼に散開していた麾下の軍勢をすぐに呼び集め、全軍を独り子の統率の元におきました。

聖なる力であられる神が、独り子の行く手にあたり、その道をあらかじめ備えていました。その命令に応じて、根元から引き抜かれていた山々はもとの場所に帰っていきます。天は再びもとの顔を新しく取り戻し、山も谷も、鮮かな花に彩られて微笑んでいます。

頑な性根を崩さないルシファーの軍勢

この光景を、敵軍も見ていないはずはありません。しかし、依然として頑な性根を崩そうとせず、愚かにも、かえって絶望から希望を求める始末。全軍をあげて、叛逆の戦いにさらに邁進しようとしていたのです。

ああ、天使にこのような依枯地な心があろうとは! それにしても、いかなる徴があればおごれる者を説得することができ、いかなる不思議があれば、頑な者を改俊させることができるのでしょうか?

彼らは、自分たちを悪より救出してくれるものを見て、かえって頑固になり、相手の栄光を見るにたえず、その姿に憎悪を感じていたのです。

同じ高い地位に着こうとする野心、力によるか、陰謀によるかはともかく、まず勝利を獲得し、最後には神と救世主を打倒する、さもなければ全軍玉砕し、亡びる覚悟なのです。

そして、両陣営は、いよいよ最後の決戦へ臨もうとしていました。まさにその時、神の大いなる独り子は、左右に控えていた味方の全軍に向かって、こう宣言しました。

「汝ら、聖徒たちよ、輝けるその装いのまま、静かに立っているがよい。武装せる天使たちよ、そのまま、ここに立っているがよい」