絵画で分かる旧約聖書・新約聖書

旧約聖書・新約聖書はとても読みづらいです。
この絵画で分かりやすい聖書は、
ギリシャ神話〉と同じく映画・美術鑑賞に
とても役に立つアートバイブルです。
天使聖人

聖アントニウスの誘惑 その1

聖アントニウスの誘惑(ボス)
ボス〈聖アントニウスの誘惑〉

福音書の言葉

聖アントニウスは西暦251年、中部エジプトのコマという村で生まれました。名前は、ana(上に)、tenens(保持している)の合成語。「上なるものを保持し現世を軽蔑する者」の意味。一家は裕福なキリスト教徒で、彼もまた生まれながらにしてキリスト教徒です。

20歳になったころ両親が死に、彼と幼い妹が残されました。両親の喪があけたある日のこと、いつものように教会へ行くと、福音書(『マタイ伝』第19章の21)の次の言葉が耳に入ってきました。

イエスは彼に言われた、
「もしあなたが完全になりたいと思うなら、帰ってあなたの持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」

彼はこの言葉にすっかり感動して、いそいで家に帰ると、両親の残してくれた土地をすべて村の人々に与え、家財については自分と妹の分だけ残し、残りは貧しい人に恵んでやりました。ふたたび教会に戻ると、今度は同じ福音書(『マタイ伝』第6章の34)の言葉を聞きました。

「だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である」

アントニウスはもう何も悩むことはないと考えて、自分と妹のために残していたわずかな家財も人々に与え、妹は知りあいの修道女にその養育をたのみ、苦行への第一歩を踏みだすことになったのです。

聖アントニウスの誘惑(ボス)2
ボス〈聖アントニウスの誘惑〉中央パネル

第一の苦行

最初にアントニウスが苦行の地として選んだのは、自分の住んでいた村から少し離れたところ。彼は他の苦行者との交流から、経験をつんだ彼らの忠告や行いに従い、苦行者として生涯をささげることにしました。

ある日、アントニウスの若さにつけこみ悪魔が襲ってきました。

悪魔は、財産、妹のこと、家族の絆、金銭欲、名誉欲、食欲、人生の楽しみごとといった、彼が断ち切っていた現世のもろもろのことを取り上げ、次に美徳の汚さ、美徳が要求する辛い労働を問題にしながら、苦行をすぐに止めるようにせまってきました。

さらに、悪魔は女に姿を変え、誘惑しはじめます。アントニウスはこの誘惑を何とか耐えていると、悪魔は第一回目の誘惑を終えたのです。

第二の苦行

自分の中にもっと過酷な苦行をしたいというアントニウス。村から離れたところに地下墓地を見つけ、そこで第二の苦行生活をはじめます。

また、悪魔の一群が彼に襲いかかり、めった打ちにしたのです。彼は声をだせないほどの苦痛で、地面を転げまわり、辛くも祈りをささげました。
「われアントニウスはここにいる、傷などなんともない。もっとたくさん傷つけられても、キリストの愛から私を離すことなどできない」

悪魔は反論します。
「まあ、みていろ。姦淫、暴力ではうまくいかなかったが、別の手でお前をかならず打ちのめしてやる」
別の手、悪魔は猛獣に姿を変えて、アントニウスに襲いかかってきました。アントニウスは全身傷だらけになり、地面にたおれてしまいました。(つづく)

聖アントニウスの誘惑(ミケランジェロ)
ミケランジェロ〈聖アントニウスの誘惑〉

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